豪雨災害の実態に詳しい静岡大防災総合センターの牛山素行教授が3日、町村長を対象とした全国防災・危機管理トップセミナーで講演し、自治体の災害対応力を強化するために「防災担当職員の育成や支援が重要」と訴えた。その一方、災害の種類や場所、状況によって対応が異なるため、「防災に単純化した正解はない」とも説明した。
牛山教授は全国の市町村に対する調査を基に、防災担当部署に専任の職員が1人もいない自治体が3割を占める現状を指摘。「防災行政を担当する職員は専門的なトレーニングを受けておらず、人数も少ない」と課題を挙げた上で、一定の知識や専門性を身に付けるための研修を受ける必要があるとした。
西日本豪雨をはじめとする近年の豪雨災害の特徴を踏まえ、「災害が発生すると、まさかこんな所で起きるとは思わなかったという声をよく聞くが、客観的に洪水や土砂災害は起こりうる所で発生している」と強調。被害の発生時期を含めた正確な予測は難しいとする一方で、「いつかは分からないが、ここではこんなことが起きそうだということは、ある程度分かる。だからこそ作られているのがハザードマップで、土砂災害については特に有効」と対応のポイントを挙げた。
さらに、最も重要なのは「地域の災害特性を知ること」と説明。「情報や研修などの制度はここ10年ほどで大幅に拡充されたが、これらのソフト対策は使わないと効果がない」と積極的な活用を促した。
牛山教授は災害情報学などが専門。西日本豪雨を受け、避難対策の強化について検討した政府・中央防災会議の作業部会や気象庁検討会の委員。