神奈川で生まれ育った2人の“なでしこ”が、日本代表をけん引する。7日(日本時間8日)にフランスで開幕するサッカーの女子ワールドカップ(W杯)。17人が初出場という若い「なでしこジャパン」で、藤沢総合高出身のDF宮川麻都、川崎北高出身のMF三浦成美(いずれも日テレ・ベレーザ所属)の21歳コンビが輝いている。1年後の東京五輪も見据えて、最高峰の舞台へ羽ばたく。
世界一に輝き、列島を熱狂させた2011年のW杯ドイツ大会から8年。4年に一度のビッグゲームに向けて最終調整する日本代表イレブンに、澤穂希、川澄奈穂美といった「顔なじみ」はもういない。
なでしこジャパンは生まれ変わった。ファイナルで米国に2-5の大敗を喫して準優勝に終わった2015年カナダ大会では平均年齢27・9歳だった。あれから4年がたち、今大会は24・1歳という若さを武器に、米国やドイツなど世界の強豪国に再び挑む。
かつては3位まで上り詰めた世界ランキングは現在7位。W杯経験者は、熊谷紗希(リヨン)らわずか6人に過ぎない。経験不足が懸念される中で、選手間の連係などを補うために鍵を握るのが神奈川育ちの選手たちだ。
今回の代表選手のルーツをたどると「昔からの顔なじみ」(宮川麻都)が多いという。幼少期を振り返れば、横浜育ちの両サイドバック、宮川はYSCCコスモス、清水梨紗はFCすすき野レディースでプレーし、川崎にはFCパーシモンのボランチ三浦成美や、今大会はけがで直前に離脱したFW植木理子がAC等々力に在籍し、切磋琢磨(せっさたくま)していた。
中でも同い年の宮川と三浦はつながりが深い。小学校高学年で県選抜、10年にはそろってU-13(13歳以下)日本女子選抜に抜てきされた。翌年にはなでしこジャパンが世界一に輝き、女子サッカーへの注目度が高まるのを肌で感じながら、2人の少女は「私たちも一緒にW杯に出ようね」と誓い合ったという。そして今、その夢が現実になったのだ。
「最初は実感が湧かなかった。自分が戦わないといけない。気持ちが高まってきた」
2月の米国遠征でA代表に初招集され、なでしこのサイドバックに抜てきされてきた宮川は言う。3歳上の兄の影響で6歳からボールを蹴り始め、同学年の小川航基(桐光学園高-J1磐田)らを輩出した横浜市港北区の大豆戸FCでも、男子に交ざってプレーした。
4年生の途中からYSCCコスモスに移籍してきた当時を中森亮監督(55)は懐かしむ。
「足元の技術は左右の差なく高かったですね。ただそれよりもすごかったのはハートです」
入団したばかりの頃だ。中学生の部で恒例の栃木・鬼怒川合宿に、小学生としてただ一人、志願参加するため、片道数時間も電車を一人で乗り継いでやって来た。その勇姿は、今もクラブで語り草となっているという。