第91回選抜高校野球大会(3月23日から12日間・甲子園)の出場32校を決める選考委員会が25日、大阪市の毎日新聞大阪本社で開かれ、神奈川からは桐蔭学園(16年ぶり6度目)、横浜(5年ぶり16度目)の2校が選出された。県勢は2年連続の出場。2校選出は昨年の東海大相模と慶応に続いて2年連続13度目。
桐蔭は、昨秋の県大会で準優勝。関東大会では常総学院(茨城)との初戦で主将の森敬斗(2年)が逆転サヨナラ満塁弾を放ち、左腕伊禮海斗(同)が準決勝まで2戦連続完投するなど底力を見せ、24年ぶり3度目の優勝を果たした。
2季連続の甲子園出場となる横浜は、エースの左腕及川雅貴(同)を軸とした投手力の高さが光り、秋の県大会で3季連続で神奈川の頂点に立った。関東大会は準々決勝で春日部共栄(埼玉)にコールド負けを喫し、8強止まりだった。
県勢以外では、前回大会準優勝の智弁和歌山や昨秋の明治神宮大会を制した札幌大谷(北海道)などが選ばれた。昨年の甲子園で春夏連覇し、史上初の選抜大会3連覇を狙った大阪桐蔭は選出されなかった。
戦力以外の要素を加味する21世紀枠は、石岡一(茨城)富岡西(徳島)、熊本西の3校が選出された。春夏通じて初出場は、札幌大谷、石岡一、啓新(福井)富岡西の4校、春初出場は筑陽学園(福岡)大分、日章学園(宮崎)熊本西の4校。組み合わせ抽選会は3月15日に行われる。
桐蔭 涙を強さに扉開く
16年もの間、固く閉ざされていた扉をこじ開けた。桐蔭学園の片桐健一監督(45)は「身の引き締まる思い。もともと力のあるチームではない。気持ちを新たに、もう一度原点に戻ってやっていく」と、冷静な口ぶりにも熱い決意がのぞく。
2003年春を最後に、鈴木大地(ロッテ)茂木栄五郎(楽天)斉藤大将(西武)ら、プロに進んだ名だたる先輩たちでもたどり着けなかった甲子園。主将の森は「うちにスターはいない。それを一人一人が自覚しながら戦ってきた」。まさに全員で、「TOIN」の宿願を成し遂げた。
道のりは険しかった。2年前の夏から3季連続で県立校に敗れた。どん底からはい上がり、昨夏は北神奈川8強。秋は関東を制した。それでも「関東王者という意識はない」(片桐監督)と、明治神宮大会初戦で敗れた悔しさを胸に刻む。このチームには、涙を強さに変える力がある。
就任1年あまりで名門を復活させた片桐監督の体が、選手の手で2度、3度と宙を舞った。
指揮官は感慨深げに言う。「(胴上げをする)選手たちの手が、たくましく感じた」。幾度も苦難を乗り越えてきたナインは、それだけ大きくなっていた。
ひたすら謙虚に、ただ目の前の一戦にだけこだわり続けるスタイルは、これからも変わらない。
「桐蔭の名に恥じぬよう、全力で戦う」と森。吉報から数時間たち、すっかり暗くなったグラウンドに、全力疾走するナインの掛け声がこだましていた。