匠(たくみ)の技を詰め込んだ圧巻のマウンドだった。開幕投手に内定している久保がオープン戦で初先発し、5回を3安打無四球で無失点。背番号27は「練習でやってきたことが出せた。予想していた結果に近いものになっている」とうなずいた。
ゆったり左足を上げ、着地直前まで打者の反応をうかがって力を解き放つ。春季キャンプから取り組んできたフォームは制球が乱れたり、シュート回転したりする危険もはらむが、久保は「リスク承知でやっている」。女房役の黒羽根は「ギリギリまで打者を見て、うまくタイミングを外している」と紙一重の投球術をたたえた。持ち味のクイックや、多彩な変化球もさえ三塁を踏ませなかった。
34歳は自身の調整はもちろん、情報収集にも余念がない。試合前には黒羽根と「面白いことをやろう」と相談。ナニータや石川ら新戦力には、あえて甘いコースに投げるなど弱点を探った。「打者の特徴を引き出し、仲間に伝えていきたい」という言葉にベテランの貫禄が漂う。
次回の登板は20日の西武戦が濃厚。2006年以来、2度目の開幕投手が2週間後に迫る。久保は「まだ監督には直接言われていない」とけむに巻いたが、中畑監督は「どこかでちゃんと伝えないと」。その信頼は一層増し、指揮官の言葉は自然と弾んでいた。
【神奈川新聞】