キャンプ最終日の広島との練習試合。3-5の九回2死二、三塁、ルーキー倉本は内角に入ってきた岩見のスライダーを芯で合わせた。
右翼ライン際への適時二塁打。初めてのプロのキャンプを堂々と締めくくる同点打に、中畑監督はうなる。「このキャンプで一番目立ち、十分期待できると見せつけた。おめでとう」
もう一人を忘れてはならない。倉本に負けじと今キャンプで台頭したのがドラフト5位の山下幸(国学院大)。キャンプ中盤以降、毎日のように2人の名を挙げた指揮官の頭には、すでに両ルーキーが入った構想が描かれ始めている。
そもそも倉本、山下幸の獲得は、内野陣の強化を目的としていた。昨季、チームが犯した失策数は実に116。内野では遊撃の山崎憲が12失策、白崎が10失策を記録した。だからこそ、ルーキー内野手2人のバットでの活躍は望外の喜びがある。
ここまで倉本は28打数10安打、打率3割5分7厘をマーク。連日の特守で守備を鍛える山下幸も20打数8安打と打率を4割に乗せる。対照的に昨季まで先発を務めた二塁の石川は打率2割5分、遊撃の山崎憲は2割にとどまっている。
2月26日の韓国プロ野球LGとの練習試合では、構想の一端が見えていた。二塁に山下幸、遊撃に倉本、そして左翼に石川の布陣を敷いた。指揮官は「何が起きても大丈夫なようにテストしている」と言ったが、ユリエスキ・グリエルが開幕に間に合わないだけに、現実的な起用法に思考を巡らせている。
開幕戦で新人2人が二遊間を組めば、球団史上初となる。ただ、進藤ヘッドコーチはいさめるように言う。「非常によくやってくれているが、本当の競争はここから。今までの主力がのほほんとしているわけがない」
ルーキーの進撃がこのまま続くのか、それとも中堅どころが巻き返すのか。何にしてもチーム力は上がっている。
17年ぶりの「優勝」を掲げてスタートした横浜DeNAの春季キャンプ。開幕に向けた1カ月の準備を点検する。