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神奈川新聞と戦争
(152) 1942年 子どもも巻き込んで

神奈川新聞と戦争 | 神奈川新聞 | 2020年8月23日(日) 05:00

「手紙の入つてゐない慰問袋は、気のぬけたビール」と記した寿屋の広告=1942年10月31日付本紙にも掲載された
「手紙の入つてゐない慰問袋は、気のぬけたビール」と記した寿屋の広告=1942年10月31日付本紙にも掲載された

 寿屋(後のサントリー)は1942年後半も、本紙に献納広告を出し続けた。

 戦時色の強い広告は寿屋に限らない。仁丹やレートフード・レートクレーム(平尾賛平商店が発売した美容液)、ライオン歯磨、第一生命保険などが「銃後奉公」のための健康維持を訴え、慰問袋(日用品を入れ出征兵士に送る袋)の送付を勧奨し、戦費確保のための貯蓄を奨励した。

 ただ、寿屋は多くの戦時広告とは一線を画していた。他社が商品名を大きく掲げる一方で、寿屋は極小の活字で「赤玉ポートワイン本舗 株式会社寿屋」と記すにとどめた。徹底した「献納」ぶりだった。

 9月10日付本紙に掲載された広告は、上半身裸の男性の挿絵とともに「ラジオ体操にせよ 冷水磨擦(まさつ)にせよ 窓の開放にせよ」との書き出しで「この夏、切角(せっかく)やりはじめたからには、ぜひつづけたいもの。又(また)ずつと続けてこそ、ききめもあり、値うちもある」と続けた。「その意志が、どのくらゐ強いか、ためされる秋(とき)!」と初志貫徹の大切さを述べた。「意志」が単なる生活習慣の改善でないことは言うまでも無い。

 同月20日には前線の兵士に手紙をしたためるいたいけな子の写真に「手紙の入つてゐない慰問袋は、気のぬけたビールみたいなものだ!」の文字を添えた。写真を用いたのが珍しい。文句は酒造会社らしい。

 写真をコラージュした広告は10月5日にも掲載された。

 メガホンで呼び掛ける男性らしき人影に「これからだ 訓練の成果 示すのは」の文字。メガホンからの“吹き出し”には次のような文句がつづられた。

 「隣組のみなさん、しつかり心をひきしめて、油断なく、真防空に挺身(ていしん)する覚悟を新たにして下さい。戦ひもこれからなら、従つて訓練の成果を実践に示すのもこれからなのです」

 子どもも巻き込み、生活のあらゆる場面に浸潤する戦争の姿がうかがえる。前回紹介した「鋲(びょう)つくり二十年」なども含め、これらの広告はこの年の秋、本紙に繰り返し掲載された。

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