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神奈川新聞と戦争
(149) 1942年 刷り込まれた「国民総意」

神奈川新聞と戦争 | 神奈川新聞 | 2020年8月9日(日) 05:00

 「この歌、どこで覚えて、どこで歌っていたのか、まったく記憶になく、メロディーと歌詞だけをしっかり覚えていて、今もきっちり歌えます」

 9日付の小欄に対し、読者の長谷川徑弘さん(横浜市西区)からはがきが届いた。1941年5月に「国民歌謡」として発売された西条八十作詞、古賀政男作曲の「そうだその意気」の一節が記されていた。

 「なんにも云(い)えず靖国の 宮のきざはしひれ伏せば 熱い涙がこみあげる そうだ感謝のその気持(きもち) 揃(そろ)う揃う気持が国護(まも)る」

 9日付の小欄では、42年7月10日の本紙に掲載された寿屋(後のサントリー)の広告「常会の話題」を取り上げた。戦費調達のために政府が設定した巨額の貯蓄目標に、進んで協力する国民の模範的な姿勢を、会話調で示したものだ。

 「それはもう なんといつたつて 日本人ですよ やるといつたら きつとやります」(略)「ほんとに うれしい心意気ですわね そんなにもみごとに気が揃ふなんて」

 「気が揃ふ」は、まさに「そうだその意気」の「揃う揃う気持が国護る」に重なる。この歌は4番まであり、引用したのは1番の歌詞。3番までは、さびの部分で「揃う揃う─」のフレーズを繰り返す。そして最後の4番だけ「凱歌(がいか)凱歌あかるい大アジア」と「大東亜共栄圏」の未来予想図を描くのだった。

 中でも注目すべきは3番の歌詞だ。「戦に勝つにゃお互いが 持場(もちば)職場に命がけ こんな苦労じゃ まだ足りぬ そうだその意気その気持 揃う揃う気持が国護る」

 これまで紹介した職域奉公の思想が反映されているし、くだんの広告との関連でいえば「まだ足りぬ」とは「意気」や「気持」といった精神性だけでなく、具体的な貯蓄目標に即した国民へのプレッシャーとも読み替えられるだろう。

 「そうだその意気」の副題は「国民総意の歌」。総動員体制を、戦場から国民生活の隅々にまで広げる意図が如実に表れている。

 「いつ、どこでどう覚えたのか記憶にない」という長谷川さんは、幼いころ、日清、日露戦争などを描いた子ども向け戦記物をごく自然に目にしていた記憶を振り返りながら「まさに刷り込みです。本当に恐ろしいですね」と話した。

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