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神奈川新聞と戦争
(146) 1942年 精神が支える「経済戦」

神奈川新聞と戦争 | 神奈川新聞 | 2020年7月19日(日) 05:00

会話調で戦費に充てるための貯蓄を呼び掛けた寿屋の広告=1942年7月10日付本紙
会話調で戦費に充てるための貯蓄を呼び掛けた寿屋の広告=1942年7月10日付本紙

 1942年7月10日の本紙に掲載された寿屋(後のサントリー)の広告は「常会の話題」と題し、この時期に政府が進めていた「貯蓄強調週間」を取り上げた。しゃれた感じの挿絵の脇に添えられた本文は、次のようなものだった。

〈或(あ)るひと

 「えらいものだね 今年の貯蓄目標 二百三十億ときいたときは アレツと 目をむいたものだが それがなんと ぐんぐん目標に近かづいてゐるつていふぢやありませんか」

 他のひと

 「それはもう なんといつたつて 日本人ですよ やるといつたら きつとやります」

 もう一人のひと

 「ほんとに うれしい心意気ですわね そんなにもみごとに気が揃(そろ)ふなんて」

 そこで皆が声をそろへて

 「さあ もうひと踏ん張り やりませうよ」〉

 会話調でさりげなく貯蓄への協力を求め、浸透させようとする。なかなか凝ったつくりの広告だが、230億円といえば30年代後半の国家予算の10倍にも迫る額で、文字通り目をむくような数字である。

 これも、国家総動員体制に基づく国民精神総動員運動の一環だった。

 白梅学園短大教授などを歴任した平賀明彦の論文「地域における国民精神総動員運動の実情」(86年11月発行「一橋叢書」所収)によると、当初「精神」に偏していた同運動は、長期戦を想定し、次第に実質を伴うものとなった。

 「『形式主義から実践へ』あるいは、『長期戦への協力は節約と貯金から』などを合言葉に、国民貯蓄の増加、国債の消化、消費の節約等々の具体的な実践項目を掲げ、人々を長期的な『経済戦』に動員することを目指す方針」を明確化していったという。

 膨大な戦費を国民の貯蓄で賄う。そんな無謀な計画の基盤は、広告に「なんといつたつて 日本人」とある通り、国家主義の「精神」だった。

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