1. ホーム
  2. 連載・企画
  3. 連載
  4. 神奈川新聞と戦争
  5. (145) 1942年 「地味は豊か」と宣伝

神奈川新聞と戦争
(145) 1942年 「地味は豊か」と宣伝

神奈川新聞と戦争 | 神奈川新聞 | 2020年7月12日(日) 05:00

 1942年6月20日付の本紙には「みんな戦友」と題し、映画フィルムを模した寿屋(後のサントリー)の広告が掲載された。


同年7月4日付本紙に掲載された寿屋の広告には節約を求めるスローガンが
同年7月4日付本紙に掲載された寿屋の広告には節約を求めるスローガンが

 「大東亜戦争に銃後なし みんな兵士だ」の文句を添えて描かれたのは、さまざまな職業の人たちが英国旗を踏んで行進する絵だ。幼子をおぶった母親、くわを持った農民、スパナを手にした工員、そろばんを掲げた商人、そしてペンを握った男性…。総動員の視覚化である。

 ペンは新聞などメディアを示すのだろう。報道が戦争に取り込まれたさまを象徴している。

 隣には大砲の攻撃から逃げる米英の兵士らしい絵に「あなたがけふ買ふ一枚の公債が米・英の心臓をえぐる弾丸となる」の文句をあしらった。その隣は商店で買い物をする和服の女性の絵に「売り手も買ひ手も戦友だ!」の文字。統制経済下に社会問題化しつつあった売り惜しみや買いだめに対する戒めだろう。そして「あなたの笑顔が日本を明るく強くする」「国運かけた戦ひだ 沈着 冷静 最後まで頑張れ」と続く。


「みんな戦友」と記された寿屋の広告=1942年6月20日付本紙
「みんな戦友」と記された寿屋の広告=1942年6月20日付本紙

 7月4日の本紙には「暮しは地味に心はゆたかに」と大書された広告が掲載された。言葉だけをみれば、ロハスのような健康で持続可能な生活様式を大切にしようとの標語に読めるが、もちろんそうではない。目的は、あくまで戦争遂行。

 小さく記された「明日の、洋々たる希望を、しつかと胸に抱いて今日の困苦を、笑つて堪へよう」という一節から、戦時経済による物不足や空腹に「堪えよう」との真意が分かる。

 挿絵からもその意図が伝わる。でこぼこ道を妻子やお年寄りを伴って歩く男性の傍らに「此(こ)のさき みちよし」の立て札。今は大変だが、戦争に勝てば楽な生活がやってくる、という楽観的で無責任な宣伝だ。

 「地味」な生活は人々が自ら選んだのでなく国策の結果であり、それを「ゆたか」だと感じることをも強いられたのだった。

神奈川新聞と戦争に関するその他のニュース

PR
PR
PR

[[ item.field_textarea_subtitle ]][[item.title]]

連載に関するその他のニュース

アクセスランキング