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神奈川新聞と戦争
(144) 1942年 「日本ハ桃太郎デス」

神奈川新聞と戦争 | 神奈川新聞 | 2020年7月5日(日) 05:00

桃太郎の鬼退治になぞらえ日本の正当性を訴えた寿屋の広告=1942年6月12日付神奈川新聞
桃太郎の鬼退治になぞらえ日本の正当性を訴えた寿屋の広告=1942年6月12日付神奈川新聞

 寿屋(後のサントリー)は1942年半ばも、何種類もの献納広告を本紙に載せた。4月17日には「他人(ひと)ごとでない!」と題し、空襲などに備え団体行動を乱さぬよう訴えた。5月10日の「燃やせ敵愾心(てきがいしん)!」は、米軍による4月18日の本土初空襲が念頭にある。「敵機の来たことによつて、長期戦の本舞台が他でもない、銃後にあることを、身をもつて知つた」と、前線と銃後の区別がなくなる近代戦の実態を示した。

 敵国の悪質さを説いたのは6月4日の広告だ。「英米といふ巨木は、数百年にわたつて、アジアの隅々に迄(まで)貪欲の根をはりアジアの美汁を吸ひとつてゐた」と欧米の植民地主義を非難。そして「アジア共同の敵」に対抗するという太平洋戦争の大義を強調した。

 その真意は同11日の「強くなれ良くなれ」と題した広告の本文に見て取れる。元気に遊ぶ子どもの挿絵を添え「大東亜を立派にうちたてるためには、日本人が中心になつて、みんなを導いていかなければなりません」というのだ。

 欧米支配には反対だが、アジアではあくまで「日本人が中心」。そのために「日本の子供が、一人のこらず丈夫で元気で、そして勉強もよくできるやうにならねばなりませぬ」と、「少国民」としての自覚を促した。侵略の正当化である。「丈夫で元気」であるべきだとの一節には、優生思想の一端もうかがえる。

 翌12日にも「ヨイ子ツヨイ子日本ノ子」の題と桃太郎の絵を掲げ「今ノ日本ハチョウド桃太郎デス。米英ハ鬼デス。米英ハ何百年モノ間ホントノ鬼ノヤウニ東亜ヲアラシテ井タノデス」と絵本のように語った。

 そして「日本ハコノ鬼ドモヲ征伐シテ東亜ニスム多クノ民族ト共ニ極楽ノヤウナイイ世界ヲウチタテヤウトシテ井ルノデス」と、改めて戦争を正当化した。

 献納広告として商品宣伝の目的を捨てた半面、読者の対象を子どもにも広げ、精神の支配を企図した。

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