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神奈川新聞と戦争
(140) 1942年 タイムリーに戒める

神奈川新聞と戦争 | 神奈川新聞 | 2020年6月7日(日) 05:00

防空訓練に合わせ掲載された寿屋の広告(左)=1942年2月21日付神奈川新聞
防空訓練に合わせ掲載された寿屋の広告(左)=1942年2月21日付神奈川新聞

 「腕に覚えをつけよ!」とは1942年2月21日の本紙に掲載された寿屋(後のサントリー)の広告だ。バケツリレーの絵を添え「その筋からの指令がないから、やらないでいい、といふものではありません。腕に覚えをつけるのならば、いくら上達しても、叱言(こごと)をいはれる筋はない筈(はず)。基本訓練だけは、怠らず実行して、腕を磨いて頂きたいものです」と記した。

 23日には「それでいゝのか…」の文句にバケツとほうきの絵。「実戦だ。そのつもりでもう一度見直すのだ! 火叩(はた)き、バケツ、砂袋と ただ門口に並べ立てたりしただけで いいのだらうか。どこに水槽を据ゑるか、どこに梯子(はしご)をおくがいゝか実戦だ。そのつもりでもう一度見直すのだ!」

 いずれも、防空に対する気の緩みを戒める内容である。この時期にこの献納広告を載せた意味は、3月1日の記事に読み取れる。

 「この気持忘れず 銃後の空をガツチリ護(まも)りませう」の見出しで、2月7~28日に横浜市全域で実施された防空訓練の成果を報じた。「神奈川区方面に於(お)ける焼夷(しょうい)弾落下訓練の如(ごと)きは従来にない壮観を呈し町内会隣組の戦時下に於ける意気を示した」とある。

 寿屋の広告は、防空対策を訴える一般論にとどまらず、記事に連動したタイムリーなものだったのだ。

 3月12日の広告は、駆け出す群衆の絵と「他人ごとでない!」の文句で、空襲などの非常時にも冷静に行動するよう求めた。本文では、開戦後に米国で動揺が広がっているとし、その慌てぶりをあざ笑った。

 「平素は謙譲の美徳を備へた紳士淑女でさへ、あられもなくお行儀が悪くなり、とかく感情にはしつたり、無責任、無反省の言動に出たりする」「ひとかど文明人らしく装ふ彼等(かれら)にしてからが、その躾(たしな)みを忘れた周章ぶりはいやはや見てはゐられませぬ」

 25行にわたる長い広告文は「全体の統制」が絶対だと結んだ。この2年半余り後、日本本土で空襲が本格化し、実際に、人々は猛火の前にあっても「統制」を強いられた。政府の指導に加え、広告の「効果」も多分にあっただろう。

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