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神奈川新聞と戦争
(139)  1942年  靴下は「一年に四足」

神奈川新聞と戦争 | 神奈川新聞 | 2020年5月31日(日) 05:00

「靴下一足買うのにも知慧を使つてください!」と訴えた寿屋の広告(1942年2月18日付本紙)
「靴下一足買うのにも知慧を使つてください!」と訴えた寿屋の広告(1942年2月18日付本紙)

 太平洋戦争開戦から日が浅く、世間に戦勝気分が漂っていた時期の寿屋(後のサントリー)の献納広告は、しかし厳しかった。

 1942年2月18日付本紙の広告は「主婦よ!」の題名に靴下の挿絵。「今までは、買うのに何の苦労もいらなかつたのが、この二月からは、さう簡単にいかなくなりました。靴下一足が二点、しかも一年に四足(乙種は六足)と制限がついた以上、無計画に買うわけにいきません」とある。

 同年1月20日の神奈川新聞(横浜地区発行)の1面に、そのことが詳述されている。見出しは「繊維製品の切符制 二月一日から断行」、本文は次の通り。

 「大東亜戦争は長期戦に亘(わた)ることを予想せられこれに備へて戦時国民生活をより一段引き締める必要があるので政府では二十日公布即実施で繊維製品(洋服、織物類、足袋、沓下(くつした)、綿布、絹、人絹等全般)の点数制を断行した」

 記事によると、県経済保安課は「不法販売や闇取引の絶無」のため業者の監視や在庫の調査を徹底。個人取引も禁止され、違反者は「消費者も総動員法によつて罰せられる」という。県経済部長の談話もある。

 「対米英宣戦布告に伴つて其(そ)の原料資源の大部分を海外に仰ぐ繊維製品にありては其の供給は漸次制限を強化せられ特に一般民需方面への配給は甚だしく窮屈となつて来た」「国民生活上最低限度の衣料品の公平なる配給を保証し以(もっ)て長期戦下国民衣料生活の安定に資せんが為(ため)に」…と、輸入制限による物資の欠乏を割と正直に打ち明けた。

 だが続く一文からは、これが決して「ご協力のお願い」でないことが分かる。

 「衣料切符の有効期間が一年と為(な)つて居るので其の期間内に必ず使用せなければならないと言ふ考へを起(おこ)し不要な物まで切符があるから買つて置くと言ふ誤つた考(かんがえ)は厳に慎んで貰(もら)ひ度(た)い」

 経済統制の実施にも増して、節約マインドの醸成こそが重要だった。だから「点数」は権利ではない、と“威嚇”したのだ。

 当然「一年に四足」では足りないだろう。それで、寿屋の広告は「細かい所によく気がつく」という主婦の「長所」を生かして「知慧(ちえ)」で乗り切れと訴えた。戦勝気分の傍らで、精神主義が肥大化していた。

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