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神奈川新聞と戦争
(137) 1942年  企業の切実な時局便乗

神奈川新聞と戦争 | 神奈川新聞 | 2020年5月17日(日) 05:00

戦争遂行のため健康維持を訴えたハリバ、仁丹、レートクレームなどの広告=1942年1月3日付神奈川新聞(横浜版)
戦争遂行のため健康維持を訴えたハリバ、仁丹、レートクレームなどの広告=1942年1月3日付神奈川新聞(横浜版)

 これまで寿屋(後のサントリー)が出し続けた献納広告を例に、新聞広告が戦意高揚に果たした役割を見てきた。内容、種類ともに寿屋が突出していたとはいえ、同社に限った話ではない。今回は同時期の他社の広告を紹介し、共通する文脈や思想を読み取る。

 1942年1月3日の神奈川新聞(横浜版)1面下には、田辺元三郎商店(現田辺三菱製薬)のビタミン剤「ハリバ」、平尾賛平商店の化粧クリーム「レートクレーム」、森下仁丹の広告が並ぶ。いずれも健康関連の商品である。

 ハリバは「産業戦士の高度栄養補給に」と題し「日夜、生産の拡充に没頭される産業戦士は常に健康と体力に細心の注意を払ふと共に、高度栄養の充実=特に不足がちな脂溶性ビタミンの補給を怠らぬことが肝腎(かんじん)です」と訴えた。軍需生産に携わる「戦士」は、健康でこそ価値があるのだ。

 同月29日の横浜版紙面でも「国民皆労のとき一人の欠勤、一人の能率低下も許されぬこの際です」と、健康維持を呼び掛けた。タイトルは「欠勤するな かぜ引くな」と容赦ない。

 レートクレームは女性が祈る挿絵をあしらい「第一線の兵隊さんが安心して戦つて下さる様に、一生懸命頑張りませう!」と、銃後を守る女性の決意を語らせる。そして「身だしなみ整容は、素肌の健康美一点ばりで」と書き添えた。

 戦時下、華美な化粧は既に禁止されていた。美容のためでなく、国家に貢献する人々の健康のために-。当時の化粧品メーカーが考案した苦肉の策である。

 仁丹は「凜(りん)と兜(かぶと)の緒(お)を締めて愈々(いよいよ)重大なこの歳へ必勝一億皆な戦士 挺身(ていしん)敢闘職場を護(まも)らふ」と、これも各自の職域での貢献を訴えた。「体力は国力」の文句もある。これは仁丹に限らず、例えば同月24日の横浜版紙面の「純精にんにく球」の広告にも「国力ハ体力から!!」とある。

 これらは、自社製品を一言もPRせず、ひたすらスローガンを書き立てた寿屋の“純粋”な献納広告とは異なる。しかし、自社の製品は戦時下にも必要だとの大義名分を掲げざるを得なかった民間企業の、切実な時局便乗ともいえた。

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