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神奈川新聞と戦争
(134) 1942年 日本こそ「機関車」だ

神奈川新聞と戦争 | 神奈川新聞 | 2020年4月19日(日) 05:00

大東亜共栄圏を主導するとの含意で蒸気機関車のイラストをあしらった寿屋の広告 =1942年1月5日付神奈川新聞
大東亜共栄圏を主導するとの含意で蒸気機関車のイラストをあしらった寿屋の広告 =1942年1月5日付神奈川新聞

 戦意高揚を目的とした寿屋(後のサントリー)の献納広告は、神奈川県新聞(本紙の前身)では「フクちゃん」もどきの少年が描かれた1941年12月15日付が年内最後だった。真珠湾攻撃の戦勝気分で明けた翌42年は、1月5日付に最初の掲載が確認できる。

 同年元日、神奈川県新聞は現在まで続く「神奈川新聞」に改題された。1月中は横浜、横須賀の両地域で全く異なる紙面が発行される過渡期の混乱もあった。寿屋の広告が出されたのは「横浜版」の方である。

 5日付の1面は「比島[フィリピン]完全制圧近し」など、日本軍の躍進を「大本営発表」そのままに仰々しく報じた。

 同じページに載った寿屋の広告も同様に勇ましい雰囲気だ。迫力ある蒸気機関車のイラストが目を引く。デゴイチの愛称で今も親しまれる国鉄のD51形で、その描写はかなり正確で、かつ格好いい。

 題は「何処(どこ)一つ故障しても全体が止(とま)るのです!」。日本の国家を機関車に例え、人々はそれを構成する「部品」として献身せよ、と呼び掛ける内容だった。

 「日本といふ巨大な機関車が、東亜共栄圏といふ列車を牽引(けんいん)して驀進(ばくしん)してゐます。この機関車が強大な牽引力と快速を発揮する為(ため)には、汽罐(きかん)も、ピストンも、動輪も、歯車も、すべての機構が一個の生きもののやうになつて働かなければなりませぬ」

 国家や国民を機関車や列車に例える。それは二重三重の意味で、時代の精神をよく表していた。

 まず、日本が「(大)東亜共栄圏」をけん引する、という構図だ。機関車が引っ張る列車の動力源は一般に、先頭にだけある。後ろに連なる客車や貨車は動力を持たず、機関車に身を預ける付随的存在である。

 このことに照らせば、植民地にしていた朝鮮半島や台湾、満州(中国東北部)はもちろん、欧米支配からの解放を掲げ「共栄」を呼び掛けたインドやマレー半島などの地域も、日本から見れば自ら動けない存在だとの含意が読み取れる。

 先導するのは、あくまで日本。アジア諸地域に対する、決して対等でない優越的な意識が「動力と付随車両」の関係に表れている。

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