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神奈川新聞と戦争
(138) 1942年 「陥落」で勢いづく広告

神奈川新聞と戦争 | 神奈川新聞 | 2020年5月24日(日) 05:00

「戦場は太平洋の全面に拡がつた!」と題した寿屋の広告=1942年2月16日付本紙
「戦場は太平洋の全面に拡がつた!」と題した寿屋の広告=1942年2月16日付本紙

 1941年12月に太平洋戦争が始まり、翌42年2月1日、県内の地方紙が統合され現在の「神奈川新聞」1紙になってから、寿屋(後のサントリー)の献納広告は一層勢いを増す。毎回新しいバリエーションを繰り出していくのだ。

 同月14日には「スパイがあなたの後に…」と題し、流言に注意を喚起する。

 「何しろ敵は金と物とに不自由ない上、悪だくみにかけては狸もはだしの米・英です。表からでは到底かなはぬと見れば、裏からつゝいて来よう! 紙がなくなる等と根もない噂(うわさ)を言ひふらす-これも裏からの攻手だ。スパイはあなたの後にゐる! 心をぐつとひきしめて、この国運かけた戦ひを闘ひ抜かう!」

 同16日には「戦場は太平洋の全面に拡(ひろ)がつた!」と題した広告。「泡喰(く)つたルーズベルトは、新年度軍事予算五百六十億ドル(約二千五百億円)を議会に提示した。米国民一人あたりの負担額は一千七百四十円となる(略)飛行機十二万五千台、戦車七万五千台、高射砲三万五千台、船舶一千万噸(トン)をつくらうといふのだ(略)諸君!“一勝に安んずるなかれ”油断こそ大敵だ!百戦百勝-敵が『参つた』といふまでは-勝つて兜(かぶと)の緒(お)を締めよ」

 17日にはシンガポール陥落が報じられた。1面記事下には森下仁丹が「祝シンガポール陥落」、ミツワ石鹸(せっけん)などを販売する丸見屋商店も「シンガポールに凱歌(がいか)あがる 一億の決意いよいよ固し 進め貫け米英に 最後のとゞめ刺す日まで」と「聖業」を祝った。

 同日、寿屋は「戦ひは始つたばかりだ!」と、航空機の編隊をあしらった広告を掲載。「敵は金と物とがあり余るほどある」「いきなり高慢の赤ツ面をガンとなぐられて仰天し、新年度軍事予算二千五百億円を組み」など内容は14、16両日に似るが、言い回しを変えて既視感を抑える工夫がうかがえる。気の緩みを戒める趣旨は同様だ。

 「戦さは長引かう! 空襲もあらうし、物の不足も避け得まい」「どんな苦しみも笑つて耐へよう!」。広告は「敵が『参つたツ』といふ迄」戦い抜け、と訴えたが、現実には、空襲や食料不足に多くの国民が泣かされたのである。

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