相模原市緑区の障害者施設「津久井やまゆり園」で46人が死傷した事件は、26日で発生から1カ月が過ぎた。戦後最悪とされる惨事を目の当たりにした入所者や職員の傷は癒えぬままだが、施設は日常を取り戻そうと懸命な努力を続けている。県も再建に向けた検討を始めており、家族や施設の合意を得た上で、10月中旬に建て替えか改修かの方向性を決める見通しだ。
心の傷抱え懸命入所者・職員
早朝のテレビニュースは見慣れた施設の映像を映し出していた。
「あの娘に、何かあったらどうしよう」。7月26日、津久井やまゆり園に60代のめいが入所する女性(72)は同区内の自宅から、夫(77)の運転する車で現場に急いだ。周囲は規制線が張られ車で園内には入れず、200メートルほど走って施設に向かった。
「ニュースでかなりの人が亡くなったと伝えていたので、半分は駄目かな、という気持ちもあった」。居室棟に続く廊下には、点々とした血痕が残っていた。
「大丈夫?」。事件から約3時間後の午前5時半すぎ、職員に案内された居室で、めいと対面した。けがはなく、「うん」とだけうなずいた。
知的障害があり、もともとあまりしゃべらない。ただ、サイレンが鳴り響き、救急隊員が慌ただしく活動する周囲の異変のせいか、普段の元気はなく、うつむいたままだった。事件のことは伝えなかったが、「いつもと違うということには敏感。あの娘なりに、気づいていたのでは」と振り返る。