1. ホーム
  2. ニュース
  3. 社会
  4. 生きる力 野菜と育て 

横浜市×NPO法人 若者自立支援4年
生きる力 野菜と育て 

社会 | 神奈川新聞 | 2016年4月1日(金) 12:06

季節の野菜が育つ畑。左手奥のアパートで、若者らが共同生活を送っている=横浜市磯子区
季節の野菜が育つ畑。左手奥のアパートで、若者らが共同生活を送っている=横浜市磯子区

 農作業を通じ、不登校や引きこもりの若者の自立就労を支援する試みが、横浜市内で行われている。市とNPO法人の協働事業で、土地を耕し野菜を栽培。畑の目の前にあるアパートで共同生活を送りながら、土に触れ、収穫の喜びを実感する中で、生きる力を養うことを目指す。事業開始から4年。成果や課題を探った。

 磯子区岡村の住宅街の一角。黄緑色に塗られたアパートの前に、「にこまるソーシャル・ファーム」と名付けられた1反ほどの畑が広がる。旬の野菜と色とりどりの花。以前は草が伸びきって、不法投棄されたごみが散乱していた土地だとは、にわかに信じがたい。

自信芽生え


 
 市と、K2インターナショナルグループのNPO法人ヒューマンフェローシップ(同区)がこの地で長期合宿型就農プログラムを始めたのは、2012年6月。「よこはま型若者自立塾」事業の一つで、若者の自立就労支援と都市農業を組み合わせた、横浜ならではの取り組み。行政がこうした事業に関わることは珍しいという。

 期間は半年。日中は太陽の光を浴びながら農作業に従事、食事作りは当番制となっている。食卓には、畑で収穫した野菜が並ぶ。市から助成を受けており、食費の実費分のみの負担で参加できる。

 市青少年育成課によると、12年度から14年度までで、計約50人が利用。現在は同法人のスタッフと、10~30代の計7人が生活する。

 現場の統括責任者・福島竜さん(35)は、参加する若者たちの変化を間近で見てきた。

 「引きこもりの経験者らは、昼夜逆転の生活を送っていたケースが多い。ここはまず規則正しい生活に戻し、社会に適応していくための最初の段階。野菜の収穫体験を通じて達成感を味わったり、『おいしい』と誰かに喜ばれることで、自分を肯定的にとらえたりすることができる」

 現場スタッフの佐藤昌英さん(29)も「農作業は、本人のペースで働ける点が良い。野菜が多少、曲がって並んでいても構わない。少しずつ、できることを増やしていくことが大切」と力を込める。

 成果は出始めている。参加者の中には、外部就労が決まった若者もいる。

 25歳の男性は、高校生の頃、けがで学校を休みがちになってから「何となく行きづらくなり」、中退。その後、一度も定職に就くことなく、引きこもっていた。「家にいては親に甘えてしまう。同じような経験をした人がいる場所なら、やっていけるかも」と一念発起した。

 農作業も食事作りも、ファームへ来るまで経験したことなどなかった。が、自分たちで作った野菜は買ってきた物とは比べものにならないほどおいしかった。丹精込めて作った物だからこそ、おいしく食べてもらいたいと、料理にも力が入った。次第に、自分に自信が持てるようになったという。

 今、仕事は半日のみだが、徐々に時間を延ばしていければと考えている。将来の夢を尋ねると、男性は少し考えてから、照れくさそうにつぶやいた。「親孝行がしたい」

救いの手を


 
 事業は順調のように見えるが、当初は決してそうではなかった。同法人代表理事の岩本真実さんは、振り返る。

 「ニート(仕事に就かず、教育や就業訓練も受けていない層)や引きこもりというと、どうしてもマイナスのイメージで見られがち。事業開始に先立ち、地域の方々向けに開いた説明会では不安や反対の意見が多く、中には『怖い』との声もあった」

 しかし、スタッフや参加者らが、草の生い茂る土地を一から耕し、収穫した野菜の販売を始めると、買いに来てくれる客が徐々に増えていった。

 今年3月には、うれしい出来事もあった。畑の前のごみ集積所が、分別や清掃活動に積極的に取り組んでいるとして、地域からの推薦を受け、区の「優良集積場所」の一つに選ばれた。

 「地域住民の理解が広がりつつあることの表れ。スタッフにとっても、参加者にとっても、大きな自信と励みになった」。岩本さんは喜ぶ。

 一方、若者支援に関しては課題もある。プログラムを経て就職が決まっても、人間関係がうまくいかなかったなどの理由で、すぐに辞めてしまったケースも。「半年たったから(支援が)終わりではない。本人の状態に応じた、長い目でのサポートが必要」。福島さんは強調する。

 同課も、課題を認識している。市内には青少年相談センターや若者サポートステーションといった支援機関が複数あるが、「支援を必要としている人たちを、各機関がどうつないでいくか。関係機関の一層の連携強化が必要だ」

 そもそも、支援機関にすらたどり着いていない人たちに、どう手を差し伸べるか。若者自立塾の存在も知らない人たちに、どう知らせていくか。効果的な支援に向け、模索は続く。

さらに一歩


 
 同法人は今、新たな地域貢献の構想を描いている。

 K2グループのパン店が4月2日、JR根岸駅近くにオープンする。その手作りパンと野菜をファーム前で売ったり、移動販売車を走らせたりする計画だ。

 高齢化が進み、“買い物難民”も多い地域にあって、ニーズは確実にあると予想している。実際、3月下旬に実施した試行販売では、地元の主婦らが次々に買い求めていた。

 さらに、

この記事は有料会員限定です。

月額980円で有料記事読み放題/100円で24時間読み放題のコースも。詳しくはこちら

若者の自立に関するその他のニュース

社会に関するその他のニュース

PR
PR
PR

[[ item.field_textarea_subtitle ]][[item.title]]

アクセスランキング