福祉施設が有名パティシエの監修の下、本格洋菓子を製造・販売する動きが広がりつつある。今月、横浜市戸塚区上矢部町にオープンした障害者就労継続支援B型事業所「スマイルガーデン」も、その一つ。質の高い商品を提供し収益を出すことで、障害者の働きがいや収入(工賃)の向上につなげる狙い。同時に、障害者が地域で共生する社会を目指す試みでもある。
運営するのは同区に拠点を置くスマイルワン。印刷を手掛ける同社のB型事業所は定員超過が続き、新たな事業所の立ち上げを模索する中、福祉施設のコンサルティング業務を担うテミル(東京)と出合った。
同社は2009年、一流パティシエや絵本作家と福祉施設をつなぐプロジェクトをスタート。現在、全国で17のプロジェクトを展開する。県内ではスマイルガーデンと、相模原市南区のB型事業所「すずらんの家」が参加している。
「お菓子の専門知識や販路のない福祉施設は多い。手作りという強みを最大限に生かすため、人と人をつなぐことで課題を解決しようと考えた」と同社。
厚生労働省の調査によると、一般就労の難しい障害者が雇用契約を結ばず利用するB型事業所の14年度の月額平均工賃は1万4838円。時間額は187円といい、工賃の改善は全国的な課題だ。
一方で、同社の担当者は、プロジェクト開始当初と比べ、そうした現状を打開しようと考える福祉施設が増えていると感じている。「商品にプラスアルファの価値を加え、収益につなげる。慈善ではなく、消費者が本当においしいと思って買うお菓子を作る。それが、利用者の働きがいにもつながることに気付きだした」
スマイルガーデンの監修は、埼玉県で「菓子工房オークウッド」を経営、数々のコンクール受賞歴を持つ横田秀夫さん。20~30代の知的障害者7人と職員らが、横田さんのレシピを基にシュークリームやフィナンシェ、マドレーヌなどの製造に当たる。パッケージや内装には絵本作家ありま三なこさんが協力した。
「お菓子作りは初めてで戸惑うこともあったが、職員にサポートしてもらっている。新しい仲間も増えて楽しい」。利用者(22)は笑顔を見せる。
生活や就労の支援の担当者(29)は、いじめなど悲しい過去を持つ障害者を見てきただけに利用者が生き生きと作業する様子が、何よりもうれしいという。会社にとって大きな挑戦だが、障害者と地域の人たちの交流スペースを設けるなど夢を膨らませている。
「利用者、家族、職員、地域の人たちみんなが笑顔でいられる場所であり続けたい」と、この担当者は話す。
午前10時~午後3時(土・日曜、祝日休み)。問い合わせは、スマイルガーデン電話045(435)5701。