新型コロナウイルス感染拡大で出されていた都道府県境をまたぐ移動自粛要請が解除され初めての週末となった20日、県内のターミナル駅や観光地では県外の観光客らの姿も目立った。多くは、新型コロナの感染に気を配りながら行動し、街はにぎわいを取り戻しつつある。
特集 新型コロナ、神奈川の感染状況
新横浜駅 就職試験の学生「ほっとした」
JR新横浜駅では終日、スーツケースを引く新幹線利用客が構内で見られ、家族などを見送る人の姿も多くあった。
「本当は4月に来るつもりだった。長く待った分、楽しみがより大きい」
20日午後、同駅に降り立った男性(75)が笑顔を向けた。滋賀県から新幹線で訪れたのは娘家族に会うためで、今春、小学校に入学した孫との再会をひときわ心待ちにしていた。
新幹線車内は「まだまだ乗客が少なく感じた」といい、「早く経済が回るようになってほしいが、人出が増えてコロナがまたはやっても困る。複雑だ」と話した。
同駅前の案内板を見ていた福岡県在住の男子学生(19)はこの日、21日に行われる県警の採用試験を受けるため来県した。
「当初5月だった試験が延期となり、心配していた。移動制限がなくなって無事に受けられる。ほっとしている」と男子学生。自粛期間中は自習に打ち込んだといい、「コロナでいろいろ大変だが、困難を乗り越えたい」と駅近くの宿泊施設に向かっていった。
親族の葬儀で香川県から帰宅するため同駅まで移動してきた都内に住む60代の女性は「移動自粛要請の解除で、安心して帰ってくることができた。ただ今後も個々で防御に努めないといけないと思う」と話した。
箱根 国道渋滞、宿も予約増
県内屈指の温泉街を抱える箱根には、県外から多くの観光客が訪れた。平常時の週末の光景は徐々に復活しつつあり、箱根町内を通る国道1号では渋滞が発生。車列は、4台に1台ほどが東京都や静岡県などの県外ナンバーだった。
箱根登山鉄道箱根湯本駅(同町湯本)には、新宿からの特急ロマンスカーが到着するたびに家族連れやスーツケースを携えた女性グループらが降り立った。運休している箱根湯本-強羅間の代行バスを待つ人の行列も久しぶりに見られた。
箱根湯本駅前の商店街では、土産や天ぷら、アイスクリームなどを手に買い物を楽しむ人が行き交った。東京都世田谷区の自営業男性(56)は「都県をまたいでの移動は自粛してきたが、ようやく念願の家族旅行ができた。感染に気を付けて、目いっぱい楽しみたい」と笑顔で話した。
宿泊客も戻り始め、同町湯本の「ホテル河鹿荘」は「この週末、リピーターを中心に都内からのお客さまも増えてきた」と話す。稼働率はコロナ禍以前に遠く及ばないものの、6月末までの予約がこの1週間で100件ほど新たに入るなど明るい兆しも出てきた。
副支配人の安達定治さんは「本当にほっとした」としつつ、「人が増えればその分、感染のリスクも増える。消毒や検温など予防策を徹底し、気を引き締めたい」と話した。