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新型コロナ
発熱患者に向き合う使命と不安 開業医「地域医療守る」

社会 | 神奈川新聞 | 2020年4月22日(水) 15:00

 新型コロナウイルスの感染拡大が収まらない中、地域の開業医が苦境に立たされている。スペースや物資などの制約から感染防護の徹底が困難な中、発熱を訴える患者に向き合わなければならないからだ。相模原市南区東林間の「やまもとクリニック」の山本晴章院長(64)=内科医=は感染リスクの不安を抱えつつ、「地域医療を守らなければ」との思いを胸に診療を続ける。


コロナ禍の中、開業医が抱える不安や苦労を語る山本晴章院長=相模原市南区の「やまもとクリニック」
コロナ禍の中、開業医が抱える不安や苦労を語る山本晴章院長=相模原市南区の「やまもとクリニック」

 小田急江ノ島線東林間駅から徒歩3分のやまもとクリニックには、発熱した患者が毎日のようにやって来る。しかし、山本院長は率直に言う。「新型コロナなのか、その他の発熱疾患なのか、診療所では見極めが困難だ」

 厚生労働省は、新型コロナウイルス関連の受診を巡り、各地に開設された「帰国者・接触者相談センター」にまずは電話で相談するよう求めている。風邪の症状や37・5度以上の熱が4日以上続いている人、強いだるさや息苦しさのある人が対象だが、「そうした診療の流れを知らずに、『熱がある』と言って電話予約を入れずに来院する患者もいる」と山本院長は内情を明かす。

 相談センターで感染の疑いありと判断された人は、感染防護設備が整った専門の「発熱外来」などを紹介され、必要に応じてPCR検査を受ける仕組みだが、スペースの限られたクリニックでは、一般の患者と動線を分けることは難しい。

 そのため、待合室や廊下で感染が広がる恐れも小さくはない。山本院長は「他の患者やクリニックの職員と家族、そして自分自身の安全を守るためには、予約のない患者の診察は断った方がいい」とも思うが、「ここまで足を運んだ人に『診察できない』とは言えない」。診察の順番が来るまで駐車場の車の中で待機してもらったり、午前や午後の診療の最後に来院してもらったりして、少しでも院内感染のリスクを下げようと知恵を絞っている。


 不安に拍車を掛けているのが、「マスクや消毒用のアルコールといった物品の入手が難しくなっている」ことだ。1月末に注文した50枚入りのマスク1箱が届いたのは、4月になってから。この間、市販品と同じ使い捨てマスクを消毒し、繰り返し使ってきた。窮状を知った患者がマスクを提供してくれたこともある。

 こうした経験のない事態の中でも診療を続けるのは「開業してから30年間、地域医療を支えてきた」という自負と使命感があるからだ。「地域の人たちの健康を守るため、自分が感染源にならないよう注意しながら、全力で頑張るしかない」と自らを奮い立たせている。

 県保険医協会が開業医に実施した緊急アンケートでは、医科の診療所や病院の6割超がマスクや消毒液が不足していると回答。9割近くが足りていないと訴える防護服については、レインコートを代用しているとの声もあった。

 同協会は「医療崩壊が危惧されているが、第一線の地域医療もピンチだ。事態が長期化すると、マスク不足などによる診療制限が増えかねない」と懸念を強めている。

 
 

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