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新型コロナ
高齢者を支える介護施設 感染の拡大防止へ綱渡りの運営

社会 | 神奈川新聞 | 2020年3月30日(月) 11:37

換気をはじめ、新型コロナウイルスの感染予防に気を配りながら運営を続ける介護施設=横浜市磯子区のデイホームたけとり
換気をはじめ、新型コロナウイルスの感染予防に気を配りながら運営を続ける介護施設=横浜市磯子区のデイホームたけとり

 新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、重症化リスクの高い高齢者を支える介護施設の苦悩が深まっている。高齢者の生活に不可欠な場でありながら、スタッフらは、対応を誤れば集団感染を引き起こしかねない不安と隣り合わせだ。感染対策の徹底には限界があり、県内の施設でも綱渡りの運営が続いている。

 「持病のあるお年寄りが集う施設なので、感染した場合の影響を考えると不安は大きい」。横浜市泉区の通所介護(デイサービス)施設「生活維持向上倶楽部『扉』」を運営する山出貴宏さん(43)の表情は険しい。

 最も懸念しているのが、施設を介在した感染者集団「クラスター」の発生だ。他県の介護施設では、クラスターの形成が確認され、利用者や職員など広範囲に影響が広がった。厚生労働省は2月下旬、通所施設などに対して利用者や職員の検温を徹底し、発熱(37・5度以上)があった場合は利用を禁止したり、出勤を停止したりする対応を徹底するよう指導した。

 山出さんの施設には、1日10人程度の高齢者が通っているが、ほとんどに認知症の症状があるという。利用前の検温はもちろん、手洗いの励行や施設内の消毒、こまめな換気など限られた職員で手を尽くしながら、運営を続けている。

 山出さんの念頭にあるのは、利用者やその家族にとって日常生活に溶け込む介護施設の役割の重要性だ。「感染で施設を閉じざるを得ない事態になれば、利用者の生活は一変してしまう。利用者を施設に託しているご家族の仕事などへの影響も避けられない」。利用者にとっては、施設での何げない会話や運動などは心身の健康維持に欠かせないものだ。

 とはいえ、ウイルス感染を防ぐ手だては確立しておらず、感染経路が不明なケースも増加している。利用者の中には複数の事業所で介護サービスを受けている人もいるといい、山出さんは「自助努力だけではいかんともしがたい」。利用者や職員の体調に神経をとがらせる日々が続くが、「やれることを確実に行い、利用者や職員の安全を確保していくしかない」と前を向く。

 訪問介護事業者の苦悩も深い。ステップ介護(同市神奈川区)を運営する日髙淳さん(62)は「感染リスクを警戒し、職員は神経をすり減らしている」と明かす。

 感染防止に欠かせないマスクやアルコール消毒液などの入手にも苦慮しており、利用者に利用回数を減らしてもらうことや、場合によっては介護士の訪問が難しくなると伝えたという。「利用者にサービスを届けるには介護士を守ることが大切。行政にはその観点で明確なメッセージを出してほしい」と要望する。

 同市磯子区でデイサービスを展開する「デイホームたけとり」でも、2月半ばにアルコール消毒液がほぼ底を突き、代用品でしのいでいる状態。運営する大竹伸行さん(61)は「食事やレクリエーション、トイレなど、何をするにしても消毒は必要。このままでは立ち行かない」と危機感を募らせる。

 利用する80代の男性は「施設の仲間やスタッフと話すのが何よりの楽しみ。通えなくなってしまったら寂しい」と漏らし、80代の女性は「自分がいつ罹患(りかん)するか不安でいっぱい」と明かす。大竹さんはこうした声を念頭に「介護施設の事業継続に関する基準はあいまい。利用者も職員も安心できる道筋を示してほしい」と話す。

 
 

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