横浜市港北消防団に、女性の消防団員のみで構成される「第八分団」がある。七つの分団に分かれて所属している女性団員を結集し、2006年に発足。訓練を重ねて活躍の場を広げるとともに、地域に安心感を与えている。メンバーらは「『社会に貢献したい』と思う女性はぜひ、入団してほしい」と呼び掛けている。
「地域に接点、女性に貢献の余地大きい」 保土ケ谷消防団に初の女性分団長
市は1995年の阪神大震災を機に、消防団を活性化させるため、97年から女性団員の採用を開始。港北消防団には翌98年、初めて女性団員が加わった。
その後、少しずつ増え、第八分団が誕生したのは2006年。現在、自営業やパートなど、20代から60代までの約90人が在籍している。
市消防局によると、女性団員の任務は当初、火災現場周辺の交通整理など消防隊の後方支援がメインだった。だが25年余りがたち、今では資機材を扱ったり負傷者を救助したりと、男性団員と共に前線で活動する機会が増えた。
女性団員の存在は、地域に安心感を与えているようだ。
第八分団の加藤康子分団長(63)は避難訓練で、逃げ遅れた高齢の女性を避難所に連れて行く途中、女性から「女性団員がいて良かった」と感謝された。連合町内会の防後優子会長(69)も「『男性団員より声を掛けやすい』との声が町内会でも聞かれる」とうなずく。
メンバー自身は活動を通じ、男性とは異なる強みがあることに気付いた。
例えば、消防隊がすぐに現着できない場合に備え、住民に消火用機材の使い方を指導している時だ。メンバーは「自分の経験を踏まえ、力が弱くても扱える方法をお年寄りらに教えることができる」と胸を張る。
メンバー個々の経験も活動に生きている。第八分団は救命講習で講師役を務めており、昨年は中学生約1900人に心肺蘇生や自動体外式除細動器(AED)の使用方法を伝授した。「子育ての経験から、思春期の子どもたちと接するのは慣れている」と笑うメンバー。市消防局港北消防署の担当者は「緻密で丁寧な指導」と評価する。
メンバーらは「女性は男性に比べ、地域に根付いている人が多い。顔の見える関係を築いていることは災害時に役立つ」と女性団員の意義を説く。加藤団長は今後の目標について「女性の立場でできることを、さらに見つけていきたい」と語った。