振り袖の販売・レンタル業者「はれのひ」(横浜市中区)が突然営業を取りやめた問題は、成人の日の晴れ着姿を心待ちにする多くの親子を傷つけた。成長した姿を親に見せたいという感謝、新たな門出をあでやかに祝ってあげたいという願い-。お互いを思いやるからこそ憤り、悲しみは深い。
「とりあえず行ってみようかな」。きっかけは電話勧誘だった。
千葉県内の女子大生(19)の自宅には、高校3年の時から成人式用着物のパンフレットが次々と送られてきた。大学入学後の昨年4月、はれのひから届いた時も「またか」と思う程度。しかし、電話で来店を促されて母親と足を運び、来年の成人式用に契約した。
選んだのは、紺地に赤やオレンジなどの大きな花柄があしらわれた色鮮やかな振り袖。3時間ほど試着を重ね、似合う色を母親とも相談しながら決めた。
「現金で支払えば5%割引」「人気の振り袖だから早く予約しないとなくなる」。店側の説明に母親は約30万円を振り込んだ。今春に前撮りを控えた今月8日、“事件”を知った。
「お金だけでも返して」。そう憤るのは、苦労する母親の姿を間近に見てきたからだ。母子家庭で育ち、経済的に苦しい生活を送ってきた。
「30万円なんて母にとっては簡単に出せるものではない。事件で一番傷ついたのは母です。それでも私が着物を着られるようにと今、新しく探してくれている」
同居する祖母には被害に遭ったことさえ伝えられずにいる。心配させたくない一心なのだろうと、母の思いを推し量る。
「母には絶対言いませんが、私が働いてまとまったお金ができたら、この振り袖分を返したいです」
来年の成人式には、感謝の手紙と花束を贈るつもりだ。
大人の仲間入りを祝う式
迎える側が裏切った
昨年1月、川崎市の男性会社員(45)は大学1年の長女(19)のために成人式用の振り袖と卒業式用の袴(はかま)を同時に購入した。セットで申し込むと割安となり、37万円の半額をすでに支払った。
2016年12月、試着イベントに電話で勧誘された。当時、