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観光規制改革<上> 滞在先、視界不良の特区構想

政治・行政 | 神奈川新聞 | 2015年5月28日(木) 09:34

 「東京圏や関西圏では、仮の申込書が月間1千ルームを超える」。宿泊情報のマッチングサービスを手がけるベンチャー企業の「百戦錬磨」(仙台市)。上山康博社長は、政府が国家戦略特区に盛り込んだ外国人向け滞在施設の経営構想に自信を強める。

 同社は昨年、不動産賃貸仲介のエイブルと提携。空き物件に旅行者が宿泊する事業構想を表明した。マンションの空き部屋や使われていない保養所のオーナーなどからの相談が多く、旅行業界出身の上山社長は「既存のホテル業界とは事業の性格が違う。日本で生活する楽しみを訪日客に提供できる」。


滞在向けに整備された物件の一例(百戦錬磨提供)
滞在向けに整備された物件の一例(百戦錬磨提供)

 昨年10月、国家戦略特区の「東京圏」の会議で示された区域計画の素案に盛り込まれた構想。ホテルや旅館にフロント業務や宿泊者記載などを義務付けている旅館業法の特例を適用し、東京と神奈川など特区圏内の空室物件などに一定期間滞在できる仕組みだ。

 観光や国際会議などで急増する訪日外国人向けの短期賃貸マンションに似ているが、事業の実現には細部を自治体が条例で定めなければならず、風穴をあけるのは容易ではない。

 昨年、対象エリアの一つ「関西圏」を構成する大阪市で、条例案が否決された。衛生や安全面への懸念が理由だったが、実際には橋下徹市長と、自民党や公明党など野党会派の対立が影響したとの見方もある。それでも「否決の事実がある以上、対応策を決めなければ前に進めない」(内閣府)のが実情だ。

 「自治体と相談したい」。先の参院予算委員会で国家戦略特区を担当する石破茂地方創生担当相は、無所属の中西健治氏(神奈川選挙区)への答弁で、構想の実現に向けて対応を急ぐ姿勢をあらためて示した。

 中西氏は「海外ではインターネットを通じて貸し手側と借り手側の情報が分かり、安心して個人宅を融通できている」と提言。深刻化する「空き家」を外国人宿泊客の受け入れに活用することでビジネスチャンスにつながると訴えた。米国生まれのマッチングサイトでは、個人宅での滞在がバックパッカーの人気を集めている。

 だが、自民党の観光立国調査会では、こんな声が上がった。「海外発のサービスにも国内のルールを守ってもらい、公正な競争を確保しなければならない」

 規制緩和に伴う新たなルールづくりに向け、さまざまな課題が浮き彫りになる中、東京圏での事業を「2015年に実施する」との目標達成への視界は開けていない。

  ◇
 
 「観光立国」を目指す規制改革は、神奈川にもさまざまな影響を与えている。検討中の政策効果や課題を政策議論の現場から考える。

 
 

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