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2015統一地方選
検証・黒岩流4年(1)ライフワーク実現、外部の力を活用

政治・行政 | 神奈川新聞 | 2015年2月20日(金) 11:20

 4月の神奈川県知事選に黒岩知事が再選出馬を表明した。1期目の4年でみせた県政運営手法や政治スタイルなど「黒岩流」をあらためて検証する。


再選出馬を表明する黒岩知事=県議会本会議場
再選出馬を表明する黒岩知事=19日、神奈川県議会本会議場

 「日本の医療の在り方をグローバルに変えていきたい」。昨年3月28日夜、知事の黒岩祐治は安倍政権肝いりの国家戦略特区の指定を受け、記者らに興奮気味に語った。私的な勉強会がひそかに始動したのはその1年半以上前のことだった。

 「グローバル市場を熟知し、日本医療の強みや弱みを理解し、行政制度の壁を体感してきた同志と世界と戦う戦略を練る」-。県の公式記録にない会の設立趣意書は「議論が特区の施策として結実し、日本医療を変える起爆剤となることを望む」と結ばれている。

 座長はアフラック日本法人創設者の大竹美喜。キャスター時代の黒岩と医療改革の勉強会を開いていた旧知の仲だ。そのほか製薬会社やバイオベンチャーなどの名だたる経営者や役員ら10人前後が顔をそろえた。

 薬事承認、国際共同治験、国際医療人材の育成、混合診療…。5、6回にわたる議論で扱った一つ一つは、黒岩が言う「開かれた医療」を完成させるパズルのピースと言っていい。免疫細胞療法を手掛ける瀬田クリニックグループを率い、黒岩とも親しい阿曽沼元博は振り返る。「いい議論だった。知事が頭を整理する上で3割くらいは役に立ったかなと思う」

霞が関でも名高い人材

 「若者、よそ者、ばか者がかみ合ったとき組織は活性化する。よそから来ている人を見てください。すごいことが起きようとしている」。昨年の仕事始め式で黒岩は力を込めた。

 発言の通り、県政運営の特色の一つは外部人材の活用にある。とりわけ「一丁目一番地」の医療・健康分野には、霞が関でも名が通る人材を取り込んできた。

 「知事が『最後は俺が責任を取る』と言うから踏み込める。国でできなかったことも取り組めている」。こう話すのは、特区など看板政策を統括する理事の首藤健治だ。医療・介護の産業化を目指すことを成長戦略に盛り込んだ民主党政権で、内閣官房医療イノベーション推進室に関わった改革派官僚。黒岩とは灘高の同窓で気脈も通じる。

 顧問には、国立がんセンター中央医院長を務めた土屋了介、再生医療の実用化を大幅に短縮する画期的な新法を手掛けた元厚労官僚の宮田俊男らがいる。県立病院機構理事長にも就いた土屋は「製薬会社などが治験をやりたいという時に受け皿になれるよう構えることは知事の構想の支援にもなる」と治験体制の高度化にも意欲を見せる。

仕事の「見える化」を

 キャスター時代の1989年に「医療ができない救急車」問題のキャンペーンに取り組んだころから医療改革を考える会や勉強会をつくり、人脈を広げてきた黒岩。庁内外で支える顔ぶれは、そこで培ったネットワークの体現でもある。

 「私なりの人選がメッセージになる。あの人がやるなら僕も、と。改革マインドを持った人が私のところに集まっている」

 特区による岩盤規制改革、メディカルスクール構想、最先端医療産業の創出、准看護師の養成停止…。知事として打ち出した野心的な政策は、黒岩自身が長年唱えてきた主張ともかなり重なる。

 ただ、神奈川を「実験場」と捉えているようにも映る方向性に懸念も少なくない。例えば、先端医療技術の早期の実用化を目的に、特区で適用を求めている保険外併用療養(混合診療)の拡充には「国民皆保険を破壊する」という声がある。幸か不幸か、現時点で神奈川での適用はなく、影響は読めない。

 「よそ者」主導の施策が専門領域に走りすぎ、県としての必要性や効果が検証しきれていないという指摘も他部局や県議会にあり、県幹部からもこんな声が聞こえてくる。

 「成果がないのは雌伏の時ゆえだろうが、何をしているかが分からない。仕事の『見える化』が必要だ」

=敬称略

◆国家戦略特区 地域を決めた「特区」で規制緩和を集中して実施し、経済の活性化を目指す制度。安倍政権が2013年6月に成長戦略に盛り込んだ。県は横浜、川崎市とともに医療・健康分野にイノベーションを起こす取り組みを提案、東京圏として県全域が認定を受けた。保険外併用療養(混合診療)の拡充や外国人医師の診療解禁、病床規制の緩和などが検討されているが、現時点で県内の緩和適用は乏しい。

黒岩県政の「外部人材」

▽特別秘書 千田 勝一郎(元菅義偉衆院議員秘書)

▽政策顧問 澁谷 耕一(元日本興業銀行副部長)

▽参与 内田 健夫(元日本医師会常任理事)、村井 純(慶応大環境情報学部長)、北澤 幸人(IHI航空宇宙事業本部)、武市 純雄(元世界銀行グループ局長)

▽理事 首藤 健治(厚生労働省医系技官)

▽県ICT推進本部情報統括責任者・CIO 根本 昌彦(未来戦略研究所社長)

▽顧問・県立病院機構理事長 土屋 了介(元国立がんセンター中央病院長)

▽顧問 渡辺 賢治(慶応大教授)、宮田 俊男(元厚労省医系技官)、久常 節子(元日本看護協会会長)、杉村 幸彦(経営コンサルティング会社代表)

 
 

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