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私が投票する理由〈2〉識者に聞く/エコノミスト・熊野英生さん 矛盾甘受するのか

政治・行政 | 神奈川新聞 | 2014年12月9日(火) 03:00

熊野英生さん
熊野英生さん

安倍晋三首相の消費増税先送りの判断と説明は矛盾に満ちている。それに気付くことができるのか。有権者が試されている。

首相は「景気を最優先する」として消費増税を先送りした。だが、2年半後は必ず10%に上げるという。では、景気が腰折れしても上げるのか。それはあり得ない。景気を最優先したことにならないからだ。

こうした説明も「財政再建を放棄した」と思われないためのメッセージにすぎない。それは「増税先送りを国民に問う」とした解散理由からも矛盾してくる。だが、それを指摘する声は多くない。

そもそもアベノミクスが争点とされるが、その必要があるのか。集団的自衛権や特定秘密保護法など争点にすべきことはほかにもあるはずだ。

そのアベノミクスも、失敗なのかと問われても「道半ばである」としか答えようがない。短期的効果しか見込めない一の矢(金融緩和)、二の矢(財政出動)を放ち、2四半期連続のマイナス成長。株価は上がり円安が進んだが、賃上げの広がりは乏しく、物価は上昇している。期待が高まる第3の矢(成長戦略)だが、弓は引かれておらず、中身さえ定かではない。

アベノミクスに課題は山ほどある。だが、ほかに選択肢がなく、安倍首相に任せるしかないという構図が既に出来上がっている。このタイミングで解散総選挙に打って出た時点で、勝負あったといっていい。

与野党の論戦にも物足りなさを感じる。消費増税先送りを野党の大半は是としてしまった。社会保障と税の一体改革も反故(ほご)にされたが、言及しなかった。安倍首相が用意した土俵にみんなで乗ってしまい、アベノミクスに対するまっとうな反論を失っている。

選択肢のない選挙といえるが、有権者は棄権するしかないのか。それは民主主義の危機を意味する。態度を保留することは、現状を受け入れることになるからだ。その意味でも有権者の意識が問われている。

自民単独で定数の3分の2に達する情勢分析も伝わるが、低投票率も予想されていることを踏まえると、獲得議席数だけでマジョリティー(大多数)の信任を得たといえるのか疑問は生じる。

選挙によって白が黒になったり、黒が白になったりするわけではないはずだ。例えば消費増税の延期という争点だが、消費増税は社会保障制度改革とセットになっている。「社会保障制度改革を先送りします」と掲げて民意を問うたとしたら、結果は同じだろうか。その意味で多数決で決めるべきではない事柄もある。

くまの・ひでお 67年山口県生まれ。横浜国立大学経済学部卒。日銀を経て11年4月から第一生命経済研究所首席エコノミスト。

【神奈川新聞】

 
 

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