横浜銀行は29日、株主総会と取締役会を開き、寺澤辰麿頭取(69)が退任し、後任に取締役常務執行役員の川村健一氏(56)が就任した。横浜銀の頭取は長く旧大蔵省出身者が就いており、1920年12月の設立以来、初めて生え抜きがトップになった。
副頭取には代表取締役常務執行役員の望月淳氏が就いた。寺澤氏は持ち株会社コンコルディア・フィナンシャルグループの社長に専念。代表取締役常務執行役員だった大矢恭好氏は取締役執行役員となり、持ち株会社の代表取締役を兼務する。
横浜銀の他の取締役は以下の通り。▽取締役常務執行役員(常務執行役員)前迫静美▽同(取締役執行役員)野澤康隆▽取締役執行役員(執行役員)大石慶之
収益源拡大へIT活用
横浜銀行の新頭取に就任した川村健一氏に、中小企業支援への取り組みや収益確保の方向性など、今後の姿を聞いた。
-プロパー頭取となり、横浜銀行はどう変わるか。
「東日本銀行と合併でなく経営統合したのは、それぞれのブランドで地域金融の役割を果たすためだ。コンコルディア・フィナンシャルグループ全体の戦略などを見据える持ち株会社とは、トップの担う責任や役割が異なる。従来よりも『地元に密着している』『地域でのプレゼンスが向上した』と言われるよう、期待に応えていく」
-銀行内外の反応は。
「(外部から)『良かったですね』との声を頂く。『横浜銀は今まで以上に頑張ってください』とエールを頂いていると思っている」
「私は入行後2、3年経った時、『将来は支店長になれれば』と思っていた。今までは(行員が)『頭取になる』と言わなかった銀行なので、夢を描いて頑張ってほしいし、そういう気持ちになっていると思う」
-地域を足元で支える中小企業への取り組みは。
「横浜銀の2016年3月期の中小企業向け融資は4%程度伸び好調だが、景気の強さがない。経営者は高齢化しており、後継者がいなければ事業拡張など考えられない。事業承継で経営者の若返りを図り、事業評価で成長するための課題を共通化し、解決して伸ばす。活力ある地元中小企業を増やすため準備している」
-金利低下で利ざやが縮小するが、貸出業務で注力するのは。また、収益源はどうするか。
「医療や介護、エネルギー、環境などの成長分野に加え、医療の中でも医薬など世の中に新しい価値を生み出す産業を応援していかなければならない」
「収益源は、(三井住友信託銀行と共同設立した)資産運用会社などに加え、(金融とITを融合した)フィンテックも極めて重要。(銀行法改正で)IT企業にも思い切って出資できる。広告収入や物販手数料など、本来業務と違う形でグループの収益としてカウントできるようになる」
-フィンテックに関する横浜銀の方向性は。
「すぐに出資するプランはないが、フィンテックのバーチャルなサービス、ネットワークと、地域金融機関としてのフェース・トゥ・フェースの関係をうまくつなぐ地銀ならではのサービスが、目指す姿だ」
「中期経営計画に盛り込んだが、休日営業店舗を増やす準備をしており、AI(人工知能)で来店時間の案内などを行いたい。ATM(現金自動預払機)やパソコンなどを組み合わせたオムニチャネルで、顧客の特性に応じて(商品などを)案内する準備をしている。ビッグデータや休日窓口と組み合わせたサービスを生み出せると良い」
「スマートフォンを使い、窓口やネットバンキングにはない新しいサービスができれば面白い」
かわむら・けんいち 1982年横浜銀行入行。新横浜支店長、経営管理部統合リスク管理室長、監査部長などを経て2012年執行役員リスク統括部長、13年取締役執行役員、15年取締役常務執行役員。県立多摩高校、横浜国立大経済学部卒。川崎市出身。