横浜市営地下鉄・JRの関内駅と馬車道商店街、イセザキモールをつなぐ「マリナード地下街」が29日、開業40周年を迎える。通勤客や地元住民が常に行き交う同地下街は、横浜の時代の移り変わりを見つめてきた。折しもJR関内駅周辺は北口の整備や市庁舎移転、教育文化センター跡地、文化体育館の再整備などの転換期を迎える。環境の変化を好機と捉え、魅力ある施設づくりにも拍車が掛かる。
マリナード地下街は、首都高横羽線の延伸や市営地下鉄関内駅の新設など、1970年ごろの都市計画に伴い生まれた。管理会社である横浜中央地下街の佐藤敦夫社長(63)は「歩行者が安全に歩行できる空間を確保する目的があった」と振り返る。コンセプトは「港に続く散歩道」。「マリナード」はマリン(海)とプロムナード(散歩道)を合わせた造語で、公募で選ばれた。
「以前は大型のショッピングセンターがなかったこともあり、多くのお客さまが専門店をひいきにしてくれていた」と話すのは、地下街オープン当初から店を構える茶葉販売店「大佐和老舗」の大澤克己社長(65)。「バブル崩壊やリーマンショックの時期は、進物用の商品の需要が減るなどしたが、常に最高級の茶葉をお届けする姿勢は変わらない」と胸を張る。
既存の常連客以外にも、30~40代女性とその家族層を呼び込む取り組みも始まっている。その一つが、3年前に誕生したイメージキャラクター「港マリ子」の活用だ。同地下街と同じ年で、伊勢佐木町生まれの40歳、夫と10歳の娘がいる設定。40周年記念でデイリーヤマザキと共同開発した「マリ子くりぃむぱん」は、早くも人気を集める。
多彩な企画で集客力向上に取り組むのは「いいのドラッグ」店主で商店会の倉沢勉会長(51)だ。市内の他の商業施設との差別化を図るためにも「人とのふれあい」を大切にしたい、と語る。毎月第1土曜日に開催するクラフト作家のマーケット「駅チカアート市」も、交流の場としてにぎわっている。地下街を「文化やアートの発信拠点」と認知してもらうことも、倉沢会長の狙いの一つだ。
東京五輪・パラリンピックが開催される2020年に向けても、前向きな取り組みが続く。出入り口のサイン看板を刷新したほか、外国人観光客のために案内板の多言語化も検討中だ。
「市庁舎移転はプラス要因。北仲通に近い関内駅北口利用客の増加が見込め、跡地には新しい就業の場が生まれる」と話す佐藤社長。「この地下街は関内・関外エリアを結び付けていく『へそ』。周辺地域と一体となった発展に尽力したい」と話している。
【マリナード地下街】衣料品や日用雑貨、飲食店など37の専門店が並び、全長約200メートル。1977年10月29日開業。10月末まで開催中の「40周年誕生祭」ではレシート合計3千円ごとに1回抽選ができ、10万円の旅行券などが当たる。抽選会は22~31日。