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13日MMホール
「涙止まらなかった」 鎮魂の子守歌再演 神奈川フィル川瀬賢太郎

カルチャー | 神奈川新聞 | 2018年10月11日(木) 11:38

 大阪教育大付属池田小で児童8人が殺害された殺傷事件から17年。亡くなった女児の母親が書いた手記を基に2005年に作曲された「子守歌-メゾソプラノ、ピアノ、児童合唱とオーケストラのための」が13日、神奈川フィルハーモニー管弦楽団によって横浜みなとみらいホール(横浜市西区)で再演される。「初めて聴いた時、涙が止まらなかった」と語る同楽団の常任指揮者・川瀬賢太郎に、タクトを振る思いを聞いた。

 事件が起きた01年は、高校生だった。当時は「悲惨な事件だけれど、どこか遠い出来事」としてニュースを受け止めていた。

 13年、東京都交響楽団(都響)が演奏した「子守歌-」をたまたま聴いた。「言葉では言い表せないほどの衝撃を受けました」。大人になり、プロの指揮者としてコンサートを通じて多くの子どもたちと触れ合ってきたからこそ、曲が生々しく迫ってきた。

 「テンポ60」という秒針と同じ速度でピアノの音が刻まれていく。児童合唱による天真爛漫(てんしんらんまん)な子どもたちの情景、子どもを突然奪われた母親の悲痛な思いや祈りが、メゾソプラノの語りや歌で表現され、それまで感じたことの無い思いが、一気に押し寄せてきた。


「われわれ大人は未来をどうして行くべきか、演奏会が社会を考えるきっかけになれば」と話す神奈川フィルハーモニー管弦楽団の常任指揮者・川瀬賢太郎=横浜市内
「われわれ大人は未来をどうして行くべきか、演奏会が社会を考えるきっかけになれば」と話す神奈川フィルハーモニー管弦楽団の常任指揮者・川瀬賢太郎=横浜市内

 川瀬は言う。「音楽家は過去に思いをはせる時間が圧倒的に長いのですが、『子守歌-』を聴いたら今をどうするべきか、未来にどんな社会を築くべきか、大人としてしっかりと受け止めて考えなければと思うようになりました」

 自身がポストを持つオーケストラでは「必ずこの曲を演奏したい」と決意し、15年に名古屋フィルハーモニー交響楽団でタクトを振った。そして、常任指揮者として5年目となった今年、これまで信頼を築いてきた神奈川フィルのメンバーとともに満を持してこの大曲に臨む。

 児童合唱は、横須賀芸術劇場少年少女合唱団が務める。「子どもたちには、事件の悲惨さを教えるのではなく、この作品に取り組むことで、お父さんとお母さんがあなたたちをどれだけ愛しているかが伝わってくれればいいと思っています」。15年の演奏会には女児の母親や家族も足を運んでくれた。母親から「ありがとう」と言われたことが、忘れられないという。

 今回の演奏会ではマーラーの「交響曲第4番」も披露する。第4楽章は「天上の喜び」とも題され、天上で暮らす子どもたちの姿が描かれている。

 「マーラーは幼いころから兄弟を次々に亡くし、生と死が身近にあった。そんなマーラーだからこそ、『天上の喜び』が書けたと思うし、『子守歌-』を聴いてマーラーの第4番を聴くことで、今までとは違った思いが観客の方にも芽生えるはずです」と語る。 

 川瀬は「この演奏会が生と死、社会の未来を考えるきっかけになれば」と話し、来場を呼び掛けている。

 
 

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