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やまゆり園事件
植松被告の死刑確定 控訴自ら取り下げ終結

社会 | 神奈川新聞 | 2020年3月31日(火) 11:05

 県立知的障害者施設「津久井やまゆり園」(相模原市緑区)で2016年、入所者ら45人が殺傷された事件で、殺人などの罪に問われた元職員植松聖被告(30)に対する一審横浜地裁の死刑判決が31日、確定した。弁護人が判決を不服として27日に控訴したが、控訴期限の30日に被告自身が取り下げ、検察側も控訴しなかった。

 一審の裁判員裁判を巡っては、有識者を中心に、被告の差別思想が生まれた背景や動機の解明が不十分との声も上がっていた。社会に潜む優生思想を浮き彫りにした事件の裁判は、控訴審が行われずに終結することになった。

 被告は公判の最終意見陳述で「どんな判決でも控訴しない」と明言。判決後の神奈川新聞社の接見取材でも、「死刑に値する罪とは思わないが、控訴しない考えに変わりない」と語り、弁護人が控訴しても自身で取り下げる意向を示していた。

 16日の地裁判決は、争点となった被告の刑事責任能力を認めて求刑通り死刑を言い渡した。大麻精神病に罹患(りかん)し心神喪失状態だったとする弁護側の無罪主張を退けた。公判では、被告が「責任能力を争うのは間違っている。自分には責任能力がある」と述べ、弁護方針に反対する場面もあった。

 判決によると、被告は16年7月26日未明、やまゆり園に侵入し、包丁で突き刺すなどして入所者19人を殺害し、職員2人を含む26人に重軽傷を負わせた。

遺族「前向いて生きる」

 「全てが済んだ。明日から前を向いて明るく生きていこうと思えた」

 植松聖被告(30)の死刑判決確定を受け、事件で姉=当時(60)=を亡くした男性(61)は横浜市内で取材に応じ、言葉を選びながら、終始穏やかな表情で話した。


死刑判決確定を受け、取材に応じる姉を亡くした男性=横浜市中区
死刑判決確定を受け、取材に応じる姉を亡くした男性=横浜市中区

 判決が言い渡された16日から控訴期限の30日までの2週間。被告は控訴しない意向を重ねて示していたが、男性は「最悪の事態」を想定し、どんな結論が出ても受け入れようと言い聞かせていたという。

 公判前も公判中も、被告の独善的な主張が報道されるたび、心は揺さぶられ傷付けられた。刑が確定すれば、外部との面会や手紙のやりとりは厳しく制限される。「被告の言葉が世の中に出てこなくなるのはうれしくて仕方ない」

 控訴取り下げの一報を受けた瞬間、安堵(あんど)感とともに胸に湧いたのは「逃げた」という思いだった。「男らしいとも潔いとも思わない。世の中にうまく映るための計算。法廷に黙って座っているのに耐えられなかっただけだ」と切り捨てた。

 刑事責任能力が争われた公判では動機の解明が進まず、控訴を求める声もあった。男性は「遺族として事件を振り返るのはつらい。解明しようという勇気もこの3年8カ月でなくなった」と複雑な胸中を吐露した。

 判決確定で気持ちの整理はついたか。記者の質問に男性は少し考えてから、つぶやくように答えた。「これで終わり。でも、悲しみは一生付いて回る。一区切りにはならないでしょうね」

 
 

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