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季(とき)めく暮らし 行事研究家、文筆家
【夜桜】

カルチャー 神奈川新聞  2020年03月26日 19:57


闇夜を照らす明かり、夜桜。桜の呼吸と合わせてたたずむ。

【2020年3月26日紙面掲載】

 7日間続いた春のお彼岸が明日、明けていきます。できることなら「暑さ寒さも彼岸まで」の言葉通りに季節が進みますように、と願うような気持ちでいるのは、突如として戻ってくる寒さが苦手、ということが一つ。

 もう一つは、今のようにさまざまな思いや考えが飛び交う世の中では、決まって同じ場所に咲く花や、長年なじんできた草の芽吹きに出合うことが、意外に日々のリズムの軸となり、心を定める薬になっていると感じてきたからです。

 お釈迦(しゃか)様も伝えたように、いずれ全てのものは変わりゆく、というのがこの世の常ですが、疲れた時、つらい時には、いつもと変わらないように見えるものに目をとめてひと休み。

 まずは自分を整えながら日々を重ねつつ、淡々と自分のできることをしていくことができればと願う日々です。

 折しも季節は桜の時を迎えて、今週中ごろには七十二候も「桜始咲」(さくらはじめてひらく)。

 彼岸桜、河津桜はもう早々と新緑になり、青々とした姿を見せていますが、山を振り仰ぐと山桜、ソメイヨシノと続いています。毎年、にぎわいを見せる桜の名所では花見が中止になり、人間にとっては寂しいことも多いのかもしれませんが、花はいつもと変わらず、着々と咲きほこります。

 明かりが全くない闇夜の中にある夜桜が、ほんのりと辺りを照らしているように見えること、それを「花明かり」という言葉で表します。

 ライトアップされた桜も豪華ですが、今年は名もない場所にたたずむ桜の木を見つけ、そのやわらかな夜桜の明かりを静かに浴びてみてはいかがでしょう。


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