新型コロナウイルスの感染防止のため幼稚園や保育所などに備蓄のマスクを配布しているさいたま市が、埼玉朝鮮初中級学校(同市大宮区)の付属幼稚園を配布対象から外している問題で、埼玉県民らでつくる市民団体は13日、差別政策の撤回を市に要請した。除外措置は在日コリアンを傷つけているだけでなく、差別的言動を誘発していると指摘。再発の防止と自ら招いた地域社会の分断を食い止めるため、ヘイトスピーチを非難する声明を出すよう求めた。
申し入れたのは「誰もが共に生きる埼玉県を目指し、埼玉朝鮮学校への補助金支給を求める有志の会」。市は対象外とした理由を「朝鮮学校は管轄外でマスクが不適切に使用された場合、指導監督できないため」と説明するが、転売を含む不正の可能性を根拠もなく持ち込んだ判断を問題視。市の担当者と面会した共同代表の渡辺雅之・大東文化大教授は「在日朝鮮人は不正をする人たちだと見下し、排除されても仕方がないという差別と憎悪を扇動するものだ」と断じた。
問題が報道された11日以降、インターネット上では「転売して北朝鮮に送金される」「親族ごと祖国へ永遠に疎開させよう」などの侮蔑、迫害のヘイト書き込みが横行。同園にも「なぜ朝鮮人に分けなければならないんだ」「朝鮮へ帰れ」といった脅迫電話が掛かってきているという。
朝鮮学校の排除を「よくやった」とたたえる歪んだ暴言もあり、同じく共同代表の中川律・埼玉大准教授は「行政が代弁してくれているという思いがヘイトスピーチを必然的に招いている。断じて許されないという立場を表明するべきだ」と強調。担当者は「ヘイトスピーチは許されない。指摘は今後の施策に生かしたい」と応じた。