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【シネマ散歩】
【ジョン・F・ドノヴァンの死と生】不器用な家族の愛

芸能 | 神奈川新聞 | 2020年3月13日(金) 11:42


 13日から、MOVIX橋本ほか全国で上映中。

 家族だからといって、必ずしも分かり合えるわけではない。この事実を痛ましいほど繊細に描いたグザビエ・ドラン監督の前作「たかが世界の終わり」から4年、再び不器用な家族の愛の物語が届いた。

 映画は主人公の死から幕を開ける。

 スター俳優のジョン(キット・ハリントン)=写真左=と、彼に憧れる11歳の少年ルパート(ジェイコブ・トレンブレイ)=同右=は秘密の文通を続けていた。しかし、ジョンは29歳の若さでこの世を去る。10年を経て注目の俳優となったルパートが、記者の取材に答える形で真相が語られていく。

 ジョン、ルパートとそれぞれの母。二組の母子の存在が鮮烈な印象を残す。愛することにも愛されることにも臆病な親子は、互いを傷つけすれ違う。子に心を閉ざされる悲しみと、母に向き合ってもらえない孤独。両者の痛みを、役者が圧巻の表現で見せる。

 脚光の裏で不安を抱えるジョンの憂えた表情に目が留まる。少年期のルパートを演じたトレンブレイの並外れた演技力と、脇を固めるオスカー俳優陣の芝居も観客を引き付けてやまない。

 広がる映像美と詩的な響きを持つせりふ回し。周りになじめない孤独な人物たちと、複雑でいとおしい家族の姿。ドラン監督の世界観は本作でも健在だ。この余韻にいつまでも浸っていたいと思わせる。非の打ち所がない傑作。

監督/グザビエ・ドラン
製作/カナダ・英国、2時間3分

 
 

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