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3・11東日本大震災7年
津波そのとき 千葉・旭市から(下) 語り継ぐ意識、鎌倉にも

津波そのとき 神奈川新聞  2018年03月11日 10:58

ステージで作品を発表するARCセッションのメンバーら=2月18日、千葉県東総文化会館
ステージで作品を発表するARCセッションのメンバーら=2月18日、千葉県東総文化会館

 「テレビで報じられなかった小さな町の、それぞれの地震や津波、てんでんこの行動や思いを語り継ぎたい。これから地震や津波が来るかもしれない地域や世代のためにも」

 2月18日、千葉県旭市の県東総文化会館。今年で2回目を迎えた「旭いいおか文芸賞『海へ』」の公開審査会が開かれていた。

 トップバッターとして登壇したのは、音楽や絵などを組み合わせて俳句を楽しむ鎌倉のグループ「ARCセッション」。代表の藤村望洋(74)=鎌倉市=ら4人のメンバーは冒頭の言葉に思いを込め、ピアノの音に乗せて「津波」や「震災」を意識した創作を次々と朗読した。

〈引き曳(ひ)きて牽(ひ)きて浪逆(なさか)の春の涛(なみ)〉
  
〈缶詰を開ける昼食震災忌〉
   
〈車椅子(いす)押す引く追い越すてんでんこ〉


 10句を詠み上げ、次代に向けたメッセージで締めくくる。

 「三・一一からもうすぐ七年。七年毎(ごと)に蘇(よみがえ)り全身で鳴く蝉(せみ)のように、七年目、次の七年目、その次、次の千年を越えて語り継ぎたい」

 東日本大震災の津波で15人が犠牲になり、首都圏で最悪の津波被災地となった千葉県旭市。文芸賞は、被害の集中した飯岡地区の人々が中心となって実行委員会を組織し、昨年初めて開催に至った。

 地元では震災以降、被災者の思いを似顔絵付きで取り上げる「復興かわら版」の定期発行などを通じ、記憶の継承を図ってきた。しかし、年配の担い手が多い上に資金面などの課題もあり、継続の道は徐々に険しくなっている。

 それゆえ、若い世代も含めた「言葉の力」に着目。「読み、書き、歌う」ことで、被災の教訓を語り継ごうと発案したのが文芸賞だった。日々の暮らしから切り離すことのできない海への思いを再確認する意味も込めている。

 今回の応募点数は、初回に匹敵する1613点。千葉県以外からも詩やエッセーなどが寄せられ、ARCセッションのように2年連続の応募もあった。

 企画の継続開催への期待を感じさせる関心の高さに関係者は安堵(あんど)したが、実行委員の1人、渡辺義美(73)は複雑な心境を打ち明ける。

 「応募が多いのはありがたいが、津波を題材にした作品が今年は少ない。この文芸賞は震災があったからこそ創設されたもの。原点を大切にしなければ」。応募の多数を占める地元の小学生に、7年前の被災体験や当時の記憶をたどってもらうのは難しく、ジレンマになっている。

 震災から5年の節目だった2016年に文芸賞創設を決めた時の宣言には、こううたわれていた。

 「海へあなたの体験を語り継ぐこと 原稿は作者が直筆すること 自ら作品を朗読すること」。そして人々に勇気と希望を与え、地域の絆が強まることを祈るとの文言もある。

 審査委員長に請われた飯岡出身の詩人、高橋順子(73)も、実家が津波で被災している。再び災禍を繰り返すまいという関係者の強い思いが、企画の底流にある。

 5時間以上に及んだ今回の公開審査会では、入選した35作の作者らによる朗読発表の後、模型船作家の夫を津波で亡くした宮内三代子(67)もステージに上がった。

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