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【K-Person】前田公輝さん
まなざしひとつで 心の陰影を表現

K-Person 神奈川新聞  2018年02月25日 11:28

映画「悪魔」に出演する前田公輝
映画「悪魔」に出演する前田公輝

前田公輝さん

 谷崎潤一郎の小説が原案の映画「悪魔」で、妄執にとらわれた男・鈴木に扮(ふん)した。悪魔のように魅力的な女子高生・照子(大野いと)と幼少期に交わした結婚の約束を、昨日のことのように口にし、すがる鈴木は、新しい下宿人・佐伯(吉村界人)が、照子と親しくなることが気に入らない。

 鈴木が抱える嫉妬心は理解できないけれど、違う意見を頭から否定しない。「一度のみ込んでから、自分ならばどうかと考える」。これは日常でも信条としている。


映画「悪魔」の1場面(C)TANIZAKITRIBUTE製作委員会
映画「悪魔」の1場面(C)TANIZAKITRIBUTE製作委員会

 妄想と現実が懸け離れていく中で「自分を正当化しないと生き続けることができなかったのだと思う。偏っているけれど、一心に思い続けるものがあることはうらやましい」。鈴木が持つ狂気の一部を自らに落とし込んだ。

 17歳で映画「ひぐらしのなく頃に」(08年)初主演。女の子と並んで歩く場面で、及川中監督に「前田公輝のままだ」と言われた。何十回も撮り直し、頭が真っ白になった。「どうしたら(役の)前原圭一に見えるだろうか」。考えた末、監督に見えないところで「手を握らせて」と共演者に頼んだ。温度を感じ、ぐっと距離が近くなった。再開した撮影で「OK」の声を聞いた時、胸に達成感が広がった。

 「デスノート」「コウノドリ」など人気作への出演が続く。進む方向に迷う時、転機の日を思い出し初心に戻る。「監督がいた場所。カメラの位置などを鮮明に覚えている。情景が浮かぶと、『役者で生きていく』と決めた感情がわき出てくる」

 キャリア20年。まなざしひとつで心の陰影を表現する。
 「悪魔は遠い存在であってほしいけれど、芝居をやる上では、悪い部分を持っている方がいい」

 ぐるり、大きな瞳が見る人の心を捉えていく。前田も“悪魔”なのかもしれない。

まえだ・ごうき 俳優。1991年横浜生まれ。6歳から子役として活動し、NHKの教育番組「天才てれびくんMAX」に抜てき。2003年から05年までメインキャラクターの、てれび戦士を務めた。「ひぐらしのなく頃に」で映画に初主演。ヒットに応えた続編「ひぐらしのなく頃に 誓」でも、主演した。キャリア20年の間には、40本以上のドラマに出演。ロックバンド「BUMP OF CHICKEN」の「グッドラック」のミュージックビデオでは、仲間と映画製作に取り組む高校生を演じた。舞台でもその才能を開花させている。

記者の一言
インタビュー後に行った撮影。体の前でふんわりと組んだ大きな手に、温かさを感じた。枚数を進めると、左に動かした瞳に寂しさがにじんだ。頰づえを突くなどして、表情を変化させていく。言葉を口にしなくても、体で感情を伝える。培った経験に舌を巻いた。軽音楽部に所属した高校時代は、ミュージックビデオに出演したBUMP OF CHICKENのカバーバンドをしていたそう。「人生で初めてサインをもらったのは、(ボーカルの)藤くん(藤原基央)」とはじけた笑顔に、こちらも笑みがこぼれた。取材では、出演作以外にも話が膨らんだ。「たくさん知っていてくださりありがとうございます」と声を掛けられ、心をわしづかみにされた。前田さんはやはり、悪魔だ…。






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