「その年をどう勝つか考えるのが現場。フロントは3~5年先を見据えてチームをつくる。根本的に時間軸が違うんだ」。2012年の「横浜DeNAベイスターズ」誕生から編成トップを担った高田繁ゼネラルマネジャー(GM)が、三原一晃球団代表に何度も伝えてきた言葉だ。
だが戦力がそろわなかった当初は「戦えるチーム」をつくるべく、即戦力選手をドラフトで指名し続けた。明確な変化があったのはごく最近のことだ。
高田GMの最後の仕事となった昨年のドラフト会議では、万能型遊撃手と評された報徳学園高(兵庫)の小園を1位指名。高校生野手を最上位で獲得しようと試みたのは筒香以来9年ぶりだった。この年は4位に甘んじたものの、「優勝を狙える戦力になった」という自負があったからだ。
結果的には他球団と競合した末にくじで外れ、東洋大の上茶谷を代わりに引き当てた。だが三原代表は感慨に浸っていた。「GMが『ようやく高校生を1位で指名できるようになった』と話された。『ようやく』という言葉がすごく印象的だった」
今年のドラフトでは桐蔭学園高内野手の森を単独1位指名した。「森下(明大)か奥川(石川・星稜高)か」。スカウト陣から即戦力投手を推す声は当然上がったが「3年後のショートがいない」という近未来の課題を優先させた。
会場に「森」の名前が響くと、「外れ1位」指名を想定していたのであろう複数の他球団幹部が天を仰いだ。
三原代表は球団の宝に育て上げる覚悟をにじませる。