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時代の正体 差別のないまちへ
ヘイト断罪されてこそ ネット被害の友思う

時代の正体 神奈川新聞  2019年12月15日 09:22

「ナタを買ってくる」「チョーセンはしね」と記された「極東のこだま」のツイート。県警の捜査後は非公開になっている
「ナタを買ってくる」「チョーセンはしね」と記された「極東のこだま」のツイート。県警の捜査後は非公開になっている

 大量の脅迫・嫌がらせツイートで平穏な暮らしを壊されたとして、在日コリアン3世の崔江以子(チェカンイヂャ)さん(46)=川崎市川崎区=が藤沢市の男を県迷惑行為防止条例違反の疑いで告訴したのは今年2月のことだ。「ちゃんと起訴されて処罰されるべきものと示されてほしい」。友人で同じ在日3世の裵平舜(ペピョンスン)さん(45)=同=はその行方にあるべき社会の姿を重ね合わせる。

 崔さんの異変を知ったのは、大好きなドリカム(ドリームズ・カム・トゥルー)のコンサートの帰り道だった。2016年の夏ごろだったか、久しぶりにはしゃいで楽しい気持ちのまま2人で乗ったバスの中、実は今、家の最寄りのバス停では降りられないのと告げられた。

 ツイッターで攻撃されているという。警察の指導で家の表札を外し、インターホンのスイッチを切り、固定電話には出ない。いつ誰から襲われるかも知れず、子どもと近所のコンビニにも一緒に行けない。なんでそんなことになっているのかと言葉を失った。

 高校時代からの付き合いだが、あれほど憔悴(しょうすい)した姿は見たことがない。家に近づくにつれて現実に引き戻されていき、心が抜けてしまったようなさまは尋常ではなかった。人の心をそうやって壊すのがヘイトスピーチであり、インターネットの恐ろしさだと知った。差別は「魂の殺人」というが、毎週末ごとに脅迫ツイートを受け、子どもまで名前を上げて誹謗(ひぼう)中傷にさらされ、絶望の深さは確かに殺されたも同然だった。

 差別をやめてと訴えただけでなぜこんな目に遭うのか。なぜ命まで脅かされる状況が改善されないのか。普通に生きていくことさえ歯を食いしばって訴えなければかなわないのかと愕然(がくぜん)とした。

 私のアボジ(父)とオモニ(母)は川崎区桜本で差別をなくす運動に取り組んできた。おまえたちが大きくなるころには差別のない社会が実現されているように闘っているのだと、そんな姿を見続けて育ち、おかしいことはおかしいと言わなければならないという考えが身についていった。

 だが、差別はなくならないどころか形を変えてひどくなった。インターネットの普及で人を容易に傷つけられる環境もできた。こうしている間にもデマや差別による攻撃は広まり続け、ひとたび書き込まれて拡散すれば、全てを消すことは不可能。個人で対応するのは無理があり、司法に救いを求めるしかない。

「死んじゃうの?」

 桜本を襲う2度目のヘイトデモが予告された16年1月。抗議運動に参加することを決め、小学2年の長男に理由を説明した。「オンマ(お母さん)はあなたと同じように日本で生まれ育ち、普通に生きてきたけれど、韓国人というだけで文句を言われ、死ね、殺すと言ってくる人たちがいるんだよ」と。

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