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津波避難促すアプリ 家族所在や避難所到着の確認OK

減災 神奈川新聞  2019年11月26日 11:47

通行不能地点や避難者数を確認できるアプリ。浸水予測の表示も可能という
通行不能地点や避難者数を確認できるアプリ。浸水予測の表示も可能という

 津波からの避難を後押しするスマートフォンアプリの実証実験が今月、川崎市で行われた。家族らの所在や避難所に到着した人数を確認できるのが特徴で、浸水の恐れがある地域の住民らが「自分は逃げなくても大丈夫」という心理に陥るのを防ぐ狙いがある。アプリを試した住民からは実用化への期待感が示される一方、「慌ててしまうので、スマホをチェックする余裕はない」と課題も指摘された。

 アプリは、東北大災害科学国際研究所と、東大地震研究所、富士通、川崎市が2017年から取り組む共同プロジェクトで開発された。試作版だが、昨年12月の実証実験で浮かんだ課題を踏まえ、使い勝手や機能を改良した。

 登録した家族ら「大切な人」の所在を衛星利用測位システム(GPS)で確認できるほか、避難所の入り口に設置したカメラで把握した到着人数が更新表示される。

 住宅の倒壊や火災などで通れなくなった道路を確認した利用者がその情報を投稿する機能もあり、後から避難する人の判断に役立ててもらえる。また、沖合の津波観測情報を基に人工知能(AI)で地元の浸水可能性を予測できるという。

 実証実験は17日に川崎区で行われた訓練の中に組み込まれ、85人がアプリを利用。スマホを手に、避難施設の市立四谷小学校などに向かった。


避難訓練では、通行不能地点に人が立ち、アプリ利用者が状況を投稿できるようにした=17日、川崎市川崎区
避難訓練では、通行不能地点に人が立ち、アプリ利用者が状況を投稿できるようにした=17日、川崎市川崎区

 県立川崎高校1年の女子生徒(15)は「通れない道がすぐに分かるし、登録した友達がどこにいるか確認できるので、とてもいい」と評価。塩浜町内会の長島郁夫会長は「大勢避難しているのが分かると、自分もという気持ちになる」と効果を実感した。

 一方で、川崎高1年の男子生徒(15)は「便利だけど、地域みんなでアプリを使わないと情報を共有できない」と課題を指摘。塩浜3丁目町内会の高橋いで子会長は「私は避難中に見る余裕がなかった。地元の状況をよく知っている人でなければ、使いこなすのは難しいのではないか」と受け止めた。

 災害時に陥りがちな心理として、直面する事態を過小評価し自分は安全だと思い込む「正常性バイアス」のほか、危険な目に遭わなかった過去のケースと同じと受け止めてしまう「経験の逆機能」などがある。東日本大震災でもこれらが人々の行動を妨げ、停電による情報不足も重なったことで、逃げ遅れにつながったとされている。

 プロジェクトを主導する東北大の今村文彦教授は当時の教訓を踏まえ、「まずは逃げる、ということを最優先にした上でアプリを活用してほしい。大都市なので、大勢の避難に伴う混乱を防ぐことが重要だ」と強調。東大の古村孝志教授は「防災や風水害時の情報も提供するなど、普段から使えるアプリにする必要がある」との認識を示した。

 市はさらに改良を図り、実用化を目指す方針だ。


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