1. ホーム
  2. カルチャー
  3. 女性同士の恋愛映画 今秋、相次ぎ公開

女性同士の恋愛映画 今秋、相次ぎ公開

カルチャー 神奈川新聞  2019年11月08日 14:18

 女性同士の恋愛を描いた映画がこの秋、相次いで公開される。性質の違いはあれど、家族や社会から白眼視される同性愛者の姿が共通して描かれる。スクリーンから迫り来る静かな訴えは、抑圧の中で沈黙を余儀なくされた彼女たちの切なる叫びとして観客に届けられる。


「ラフィキ ふたりの夢」の一場面(C)Big World Cinema.
「ラフィキ ふたりの夢」の一場面(C)Big World Cinema.

 9日からシアター・イメージフォーラム(東京都渋谷区)など全国で順次公開されるケニア映画「ラフィキ ふたりの夢」(ワヌリ・カヒウ監督)は、ナイロビを舞台に二人の少女が恋に落ちる物語。世界中の映画祭に出品された話題作にもかかわらず、本国ケニアでは上映禁止となった。同国で、同性愛は違法となるからだ。

 看護師を夢見る控えめな性格のケナ(サマンサ・ムガシア)は、自由奔放で快活なジキ(シェイラ・ムニバ)と出会う。女性は家庭に入るべきとの考えが根強い保守的な価値観に抵抗する二人は、磁石のように引かれて「本物になろう」と誓い合う。だが、その恋は激しい憎悪と暴力にさらされる。

 初々しく繊細な恋心を、本作が映画初出演のムガシアがこまやかな表情のうつろいで表現。ムニバはピンクのヘアスタイルがまぶしいジキを生き生きと演じる。二人が醸す幸福感とは対照的
に、同性愛を「悪魔」とののしるケナの母親らの冷酷な目が、彼女たちを暗い底に落とす。

 アフリカ諸国ではLGBTなど性的少数者が迫害され、時に命の危機に瀕(ひん)しているのが現状だ。「キャストやスタッフは同性愛への根深い偏見と闘った」とコメントしたカヒウ監督の言葉はまさに、アフリカで同性愛を描く困難を物語る。純粋な思慕の念で結ばれるケナとジキの姿は、見る者に人を愛する意味を問い掛ける。


「虹色の朝が来るまで」の一場面Ⓒ2018 JSLTime
「虹色の朝が来るまで」の一場面Ⓒ2018 JSLTime

 ろう者の監督今井ミカが手掛けた全編手話の日本映画「虹色の朝が来るまで」は、耳の不自由な華(長井恵里)とあゆみ(小林遥)の恋模様を優しく包み込む視点で描く。

 群馬県の手話サークルで知り合った二人は、友人から恋人の関係に。両親にあゆみとの交際を告げた華は「気持ち悪い」と反対され、打ちひしがれてしまう。見かねたあゆみは東京で開かれるろう者と性的少数者の集まりに華を誘う。同じ立場の存在に励まされる華は、あゆみへの思いを改めてかみしめる。

 ストーリーは物静かに進むが、ろう者でレズビアン(女性同性愛者)という、何重にも生きにくさを抱えやすい少数者の姿を誠実に映す本作は、社会に新たな視点を与えてくれる意欲作。

 主演の長井と小林は演技経験のないろう者の当事者。互いを信頼し、穏やかな関係を築く華とあゆみの実直さをナチュラルに演じ切った。

 「結婚している人たちと同じように、ただあゆみと幸せになりたい」。華の涙ながらの訴えが胸を打つ。20日からシネマート新宿(東京都新宿区)ほか全国で順次上映する。

 「ただ普通に恋がしたい」というささやかで切実な願いを、両作品は力強く支えている。「ラフィキ」はシネマ・ジャック&ベティ(横浜市中区)でも公開予定。


シェアする