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座間市の出版社「犀の工房」が三冊目の翻訳絵本

カルチャー 神奈川新聞  2019年11月07日 18:11

「このままじゃ学校にいけません」
「このままじゃ学校にいけません」

 座間市にある出版社犀(さい)の工房が、同社三冊目の翻訳絵本「このままじゃ学校にいけません」(1760円)を刊行した。一人の少女が学校になじめずふさぎ込むも、ユーモアを交えながら日々を過ごす物語。「心が疲れて学校や仕事への足取りが重い人たちにこの本を届けたい」。同社の出口有加さん(38)はそう話す。

 作者のベン・ブラッシェアーズさんと絵を描いたエリザベス・バーグランドさんは、ともに米国在住の新人作家。翻訳は「おさるのジョージ」シリーズ(岩波書店)などの訳書がある福本友美子さんが手掛けた。

 主人公のエディは朝からぐったり。髪を引っ張られたり、お気に入りのおやつをからかわれたり、学校ではいつも独りぼっち。「何か他のものになりたい」という鬱屈(うっくつ)した思いで、自分をコウモリやホッキョクグマ、アルマジロなどの動物に見立てる。

 からかう男の子には「地球上で一番足が速く、気の強い」チーターに成りきって仕返しも。校長先生から叱られると、カメレオンになってやり過ごす。つらい状況をユーモラスに乗り越えようとする姿が、切なくもくすっとした笑いを誘う。

 学校に行きたくないエディの気持ちを、母親が静かに受け止める。3人の子どもがいる出口さんは、親としても本作に共感を寄せたという。小学生の長女が学校を休みがちになったことがあり、自身とエディの母親を重ねてみた。


翻訳絵本「このままじゃ学校にいけません」の魅力を語る出口有加さん
翻訳絵本「このままじゃ学校にいけません」の魅力を語る出口有加さん

 子の親や、かつて学校に行きづらかった大人なども本作を手に取っているといい、「わが子を見守る保護者、子どもの頃に集団が苦手だった人。さまざまな人が共鳴できる作品だと気付きました」。

 本作の魅力は、エディの心情のように繊細な絵のタッチにもある。全編を通してパステル調の優しい色合いが物語を包む。

 後半まで、エディをはじめ登場人物の顔に目が描かれていない。出口さんは「自分を肯定できない気持ちや、自分そのものを隠すことの象徴ではないかと感じます」と解釈する。

 やがて母親に本心を打ち明けるエディは、真っすぐな目を見せて前を向く。エディの豊かな空想と、子どもの気持ちに寄り添う優しさが伝わる心温まる一冊だ。

 自身の子どもたちへの読み聞かせを通じて絵本が身近な存在となった出口さんは、2年前に犀の工房を立ち上げて以降、一人で会社を切り盛りしている。

 「子どもも大人も夢の世界に入り込めるし、現実にも向かえる。絵本っていいものだなと、つくづく思います」。本作を眺めながらそうかみしめる出口さん。毎日に疲れ、気分が沈みがちな人やその家族が本作に触れ、「少しでも心を軽くしてもらえたら」と話している。


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