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【K-Person】三浦しをんさん
自分にない視点 書きたいのは“人”

K-Person 神奈川新聞  2019年09月29日 11:27

三浦しをんさん


三浦しをんさん
三浦しをんさん

 最新エッセー集「のっけから失礼します」は、現在も続く女性ファッション誌「BAILA」での約5年にわたる連載と書き下ろしをまとめた。ありふれた日常を、独特の感性と妄想で彩る抱腹絶倒の“三浦ワールド”が広がる。

 「行間を読み込むものでもないので、気軽に読んでもらえれば」

 2011年、12年の神奈川新聞文芸コンクールでは審査員を務めた。講評会での「小説は希望を感じさせるものを」とのアドバイスが印象的だった。

 「(自分の)小説の場合、暗い話がなくはないが、暗くて嫌な感じだけにならないようにしている。エッセーには、なるべく嫌なことは書きたくない。すごく腹が立つことがあっても、ある程度客観的に、ユーモアをもって書けるものを書いている。心が広い印象でいたいし」と笑う。

 「魅力的だなと思った人や物は、書かずにいられなくなる」のが、創作の原点だ。箱根駅伝や辞書の編さん、林業といったある世界への関心と探究心が作品に結びつく。直木賞受賞作の「まほろ駅前多田便利軒」をはじめ、三浦作品で描かれる人物の味わい深さや多様さは、人間観察のたまものだろう。


「のっけから失礼します」表紙
「のっけから失礼します」表紙

 「書きたいな、と思うのは人。日常的に接している人でも『こういうことに興味があるんだな』と分かると、その人をもっと知りたいと思う。自分にない視点を知るのが好きで、楽しい」

 小説「愛なき世界」では、植物の研究にいそしむ大学院生らを主人公にした。東京大学大学院の塚谷裕一教授から、小説の題材にしないかと提案されたのがきっかけだった。

 「理系のことは全く知らなかったが、研究室を見学したら楽しくて。これまで自分が興味のあることばかり書いてきたが、そうじゃないものも、うまく関心が合えばいいなと思えた」

 同作は綿密な取材に基づく。「のっけから-」には、研究室取材時のエピソードも顔を出し、創作の裏側が垣間見えるようでファンにはたまらない。

 今月末発売の文芸誌で始まった連載小説を執筆中だ。「明るくて楽しい系の青春物。青春に相当遠くなり『分からねえ』って感じですが」

みうら・しをん
 作家。1976年東京都生まれ。横浜雙葉中学・高校を経て、早大第一文学部卒。2000年、小説「格闘する者に○」でデビュー。06年「まほろ駅前多田便利軒」で直木賞、12年「舟を編む」で本屋大賞、15年「あの家に暮らす四人の女」で織田作之助賞を受賞。「ののはな通信」で18年島清恋愛文学賞、19年河合隼雄物語賞受賞。「愛なき世界」で19年日本植物学会特別賞受賞。その他の小説に「風が強く吹いている」「神去なあなあ日常」など、エッセー集に「悶絶スパイラル」「本屋さんで待ちあわせ」など多数。11、12年に神奈川新聞文芸コンクール審査員を務めた。最新エッセー集は「のっけから失礼します」(集英社、1728円)。

記者の一言
 「今、一番気になっていることは?」の問いに「三代目(J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE)」。前日に名古屋までライブに行ったばかりの三浦さんには愚問だった。最近のエッセーに度々登場するダンス&ボーカルグループ。自身も意外なほどはまっているという。「動いている姿を見るのが一番いい!」と、三代目、ジャニーズ、K-POPのダンスの特徴で盛り上がり、記者の好きな「東方神起」に至っては「東方神起先輩は」と切り出す三浦さん。一体あなたの立ち位置は、と心中で問いつつも非常に楽しいひとときだった。かつて弊社の文コンの帰りには県民ホールでの「BUCK-TICK」ライブに直行されたつわもの。今はチケットがなかなか取れないとか。


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