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酒と涙と男と天ぷら(21)
免許更新 よみがえる26年前

話題 神奈川新聞  2019年06月28日 02:08

一瞬にして、多くの人の人生を狂わしてしまう交通事故(写真は本文とは一切関係ありません)
一瞬にして、多くの人の人生を狂わしてしまう交通事故(写真は本文とは一切関係ありません)

 先日、免許の更新に二俣川の運転免許試験場に行ってきました。去年、出前を届けるのに慌ててノーヘルでバイクを運転して反則切符を切られるまでは、長い間優良運転手だったので、およそ十年ぶりの二俣川でした。

 駅前はすっかり様変わりして、かつての田舎の駅前商店街から、あか抜けたモダンなショッピングビルになっていました。現代ではたった十年で浦島太郎になりますよね。それでも何とかバスに乗り試験場に着きました。後は順路の指示に従い、手続きを淡々とこなし、最後に講習。うつらうつらするのがいつものパターンでしたが、安全運転指導用ビデオ「悲しみが止まらない」にはまってしまい、ラストでは不覚にも涙がこぼれてしまいました。

 永島敏行演ずる優秀なサラリーマンが飲酒運転で人をひき殺してしまい、相手の家庭はもちろん、彼の愛する奥さんとかわいい子供のいる幸せな家庭が一瞬にして壊れてしまうというストーリーでした。この悲惨なビデオを見て、二十六年前にわれわれ夫婦が巻き込まれた事故がまざまざと脳裏によみがえり、思わず身震いしたのでした。

 その年、自宅近くのスナックで、当時はやりのインベーダーゲームを友人のガラとケメそして結婚前の嫁さんと私の四人で興じていたときでした。ゲームの破裂音にまじり、キーッというタイヤのきしむ音が聞こえたなと思った瞬間、よっぱらい運転のシボレーカマロが突然店内に飛び込んできたんです。

 横の壁とガラスがスロモーションのように頭上に崩れ落ちてくるのが分かりました。次に気付いたときは四人とも三メートルほど飛ばされ、がれきの中に倒れていました。嫁さんは一瞬気を失ったようでした。嫁さんが自分より弱いと感じた生涯でたった一度の記念すべき瞬間でした。

 店内は真っ暗になり、ガスの漏れるような音とにおいに、僕は気を取り直して嫁さんを連れて外にはい出しました。この時、嫁さんをかばって上から覆いかぶさったこと(偶然、嫁さんの真上に飛ばされたという説もある)と、緊急時の妙に落ち着いた対応(実は顔面蒼白(そうはく)だった)が、今でもわが家の英雄伝として、私だけの思い出話になっています。

 この事故では結局通行人一人が死亡、私を除く三人が重傷という大事故となったのでした。この時、私だけが軽傷で、私の治療が体中に刺さったガラスの小破片を掃除機で吸い込んだだけというのも不思議ですよね。確かに翌日は傷跡一つありませんでした。

 この年、ガラとケメ、そして僕たちと続けて結婚しましたが、あの時、もしも! と思うとぞっとします。今でも僕たち四人はレストランに入ったときは決して窓際には座りませんし、インベーダーゲームなんか見るのも嫌です。

 免許更新の指導用ビデオに思わず涙し、「飲んだら乗るな!」とあらためて誓った素直で単純な私ですが、最近は飲んだらすぐに寝てしまいます。「飲んだら寝るね!」が一番です。

(2005.4.3)



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