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【K-Person】赤坂真理さん
横浜舞台に天皇制を考える だれもが議論できる社会に

K-Person 神奈川新聞  2019年04月28日 11:25

赤坂真理さん


赤坂真理さん
赤坂真理さん

 「日本の戦後処理のまずさは、天皇の存在と関係があると直感がありました。だけど、誰も言わない。気付いていないのか、それともタブーなのか…」

 小説「東京プリズン」で、16歳の少女を主人公に「天皇の戦争責任」を描き、数々の賞に輝いた。「小説で書くしかなかった」。評論という突き放した視点ではなく、少女の目を通して生活の地続きにある歴史を見つめていく。「自分にあったのは“驚き力”です。戦後、天皇制がなぜ残されたのか、その歴史を学ぶたびに驚きがあった」と振り返る。

 あれから6年。平成の最後にもう一度、「天皇と戦争」の問題を見つめ直そうと、新たな物語「箱の中の天皇」を書いた。


 「普通に考えてほしかった。女性天皇の問題や、昭和天皇はなぜ免責されたのか。研究者しか語れない風潮を変えたいと思いました」

 日本人、戦争、天皇-。自分にとって三つをつなぐ原点となったのは、母親の存在だった。「ママはね、東京裁判の通訳をしたことがあるの」。祖母から突然知らされた、母親の知られざる歴史。

 中学を卒業すると、母親の強い勧めから単身渡米することになった。「なぜ米国だったのか? あれだけ負けて、原爆まで落とした国なのに…」。米国への憧れ、怒り、全てが入り交じり、考えれば考えるほど違和感が残った。

 日本の戦後とは何だったのか-。その答えを知ろうとすると、米国と象徴天皇制の問題が浮上し、二つの小説を生み出すことにつながった。

 今作では、老いた母親と主人公の「まり」が、横浜のホテルニューグランドを訪ねる。そこに現れたのは、連合国軍総司令部(GHQ)の最高司令官だったダグラス・マッカーサーだ。「ヨコハマメリー」を思わせる白塗りの娼婦(しょうふ)も現れ、物語が進んでいく。

 「メリーさんを見ていると、豊かな者に憧れる気持ちが分かる」と語る。そして、物語の終盤には平成天皇が姿を現し、まりにこう告げる。

 「私も一人の人間です」

 「神話は誰かの意図で書かれるもの。その神話を誰が利用するのか、それを見極める目を次の時代に育てていかないといけないと思っています」

あかさか・まり 1964年東京生まれ。2012年、長編小説「東京プリズン」で毎日出版文化賞、司馬遼太郎賞、紫式部文学賞を受賞。寺島しのぶの主演映画「ヴァイブレータ」などの小説も発表。評論作品「愛と暴力の戦後とその後」など著書多数。近著「箱の中の天皇」(河出書房新社、1512円)。

記者の一言
 山下公園、ホテルニューグランド、メリーさんをモチーフにした女性。横浜ゆかりの場所や人が度々登場する。オペラ「蝶々夫人」の舞台を山手に変えた、赤坂さんオリジナルのストーリーは、女性たちの悲哀のエピソードが残る横浜で、ぜひ舞台化してほしいと感じた。「令和と聞いて、近代をさかのぼり、古代の律令(りつりょう)国家が頭をよぎった」と赤坂さん。天皇や憲法、国の在り方を、誰もがタブー視せず自由に議論できる時代になってほしいと、強く思った。


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