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酒と涙と男と天ぷら(10)
銀婚式 ワインを目指して長旅

話題 神奈川新聞  2019年06月28日 01:44

銀婚夫婦は背中と代名詞で語る
銀婚夫婦は背中と代名詞で語る

 ついに来てしまいました。私ども夫婦もこの九月をもちまして結婚二十五周年、世間でいうところの銀婚式を迎えます。銀婚式ってジーさんとバーさんの記念日だとばかり思っていましたけど、残念ながら本当にその通りでした。

 なにしろ女房は老眼でメガネがないと字が読めないのにメガネがいつも見つからない。私は天然ボケに少々の記憶喪失がプラスされ、メガネという単語まで思い出さない。これじゃあ会話が成立しません。こんなとき、代名詞って便利ですよね。私はアレ、コレ、ソレで見事に女房との情報の伝達に成功しました。二十五年間のたまものです。エヘン。

 思い起こせば、ホテルニューグランドでの挙式がスタートでした。おやじは感激していきなり泣きだすわ、知らないおじさんが高砂をうなるわ。こうなると紅組も黙ってはいない。女房のおばーちゃんの黒田節の舞いが延々と続き、結局、メーンであるはずのケーキカットよりもはるかに盛り上がった妹のピアノ独唱「いとしのエリー」で紅組の勝ち│って、主役は誰なの? おまけにその日は台風が上陸し、雨降って地固まるというよりは、各地で土砂崩れが発生したのでした。

 今では子供たちも一応? 成人になり、母上も元気はつらつ。店は改築中で少々の時間がある。今しかないと銀婚式記念旅行に行くことになりました。目指すはウチの店の赤ワイン「テンプラニーリョ」のふるさとスペインはトレド地方。目的はワイナリーで思いっきりテンプラニーリョを飲んだくれることと、フライスター宮川社長ご推薦のワイナリーの超美人ガイド、カテリーナに会うことでした。

 マドリードから電車とバスを乗り継いで、やっとトレドに到着。さらに一面の小麦畑の中をタクシーで二時間。他に交通手段はありません。二人とも老眼で字は見えないし、おまけに言葉も通じない。帰路を考えると、さらに落ち込んでいく私たち。久しぶりに二人とも「心細い」って状態をたっぷり味わえました。

 そんな不安もカテリーナの笑顔を見た途端に一発で吹っ飛びました。念願のワイン飲みっ放しも達成。タクシーの運転手もあわれな酔っ払い中年を見かねて、無料でずっと待っていてくれました。「渡るトレドに鬼はなし」。思わず、「世界は二人のために」を口ずさんだ私たちでした。

 しりに敷かれて二十五年、土砂降りの日も何とかやってこれたのも強い女房があればこそ。ちなみに、二十五年前の新婚旅行先は、くしくも先日までオリンピックが行われていたアテネでした。次は二十五年後。目指せ、夫婦で金?婚式!

(2004.9.5)



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