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酒と涙と男と天ぷら(1)
トラウマ ワインをめぐる冒険

話題 神奈川新聞  2019年06月28日 01:24

原 茂男さん(はら・しげお)
1953年横浜生まれ。浅野学園、武蔵大卒。
天吉(明治5年創業)5代目店主。
サザンオールスターズの原由子さんは実妹。
横浜市磯子区在住。




天吉
天吉

 はじめまして。横浜は関内、吹けば飛ぶよな天ぷら店の五代目です。家族は宝塚おっかけの母上とJAZZボーカリストで女将の女房、そしてギタリスト気取りの息子二人です。毎日、家のどこかで音が鳴ってます。

 おまけにヨソ様へ嫁いだ妹は音楽で飯食ってますし、私も趣味でJAZZベースをやってます。音楽はウチの血統だと四年前に亡くなった父が自慢げに言ってました。父は戦時中Y校のブラスバンドで、一カ月でクビになるまでピッコロを吹いていたという筋金入りです。

 もう一つの血統がお酒。舌が特に優れているわけでも、知識が豊富なわけでもありません。飲んべえなんです。私も妹も飲み出したら止まりませんし、父はお酒で逝っちゃったくらいです。そんな大好きなお酒ですんで、ウチの店では三つの条件をクリアしたものだけ置いてます。

 一つ、天ぷらに合うこと。そりゃそうですよね。二つ、自分が大好きなお酒であること。当たり前じゃんね。三つ、安いこと。もういいから笑ってやって。そんな訳でお酒を選ぶのは楽しみ、いや大変なんです。

 十年ぐらい前になりますが、神戸で会議がありまして、ある高級レストランで食事をすることになりました。旅先のディナーは心を大きくさせてくれますね。おいしいワインでイイ気持ちになったなと思ったときでした。友人の一人がソムリエにこう言ったんです。

「あなたの一番好きなワインを下さい」

 みんな浮かれていて、その後のソムリエの説明をまともに聞いていませんでした。酔っ払ってはいましたが、確かにおいしい赤ワインでした。が、請求書を見てビックリ。なんとウン十万円! 酔いが一瞬にしてさめました。それがロマネコンティとの出会いでした。ゴメンね。ロマネコンティ、いつかまた会おう!

 この体験が“トラウマ”となり、高級なワインを前にすると、まず財布の中身が気になる金銭欠乏性アルコール依存症が発症したのです。安くておいしい赤ワインを探すキッカケにもなりました。とにかく天ぷらに合う赤ワインがどうしても欲しくなったんです。

 それにはまず、ワインのことならソムリエに聞け! 素人はすぐ人に頼ります。ソムリエの君嶋さんとは浅野の同級生、シンちゃんの紹介で知り合えました。その君嶋さんにお願いし、天ぷらに合う赤ワインを見つけることになったのです。

(2004.1.1)



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