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【K-Person】向井理さん
祖父母の思い出を映画化

K-Person 神奈川新聞  2017年05月21日 12:05

向井理さん
向井理さん

向井理さん

 大学時代、亡くなった祖父・芦村吾郎との思い出をつづっていた祖母・朋子の手記を見つけた。本にして自費出版し、祖母の卒寿のお祝いに贈った。

 戦中・戦後の混乱期を生きた祖母たち。パンを分け合って食べたといった記述を見ても、当時は自分が生きる時代環境との差もあり、実感が抱けなかった。

 2010年に、ドラマ「ゲゲゲの女房」で水木しげるを演じたことが大きな転機になった。貧しい時代を生き抜いた人間の強さに触れ、祖父母の人生が重なった。撮影後、ドラマの脚本を務めた山本むつみに、かつて自費出版した本を手渡し「映画にしたい」と思いを伝えた。

 普通の暮らしを懸命に生きた人の物語。企画は時に難航し、何度か立ち消えになりかけた。7年を費やして作り上げた映画「いつまた、君と ~何日(ホーリー)君(ジュン)再来(ザイライ)~」が6月24日から全国公開される。


(C)2017「いつまた、君と ~何日君再来~」製作委員会
(C)2017「いつまた、君と ~何日君再来~」製作委員会

 軍務で中国にいた祖父と日本にいた祖母は、3年間の文通を経てようやく出会う。初デートは1940年の日本。朋子(尾野真千子)は、中国で描いたという絵を楽しそうに見せてくれた吾郎(向井理)の横顔にひかれた。除隊後も吾郎は中国に戻ると言う。「私、行きます」。朋子はとっさに口にする。出会いから数時間で結婚を決めた。驚いた表情の後、笑みを見せた吾郎。朋子はその笑顔をずっと見ていたかった-。

 映画化への動きが頓挫している間に、祖父が中国に行った年齢になった。「ちょっとずつ階段を上る間に僕も結婚をして、子どもが生まれて。人としての経験を積むことができた。20代では演じることができなかった作品。全てが運命的だった」と振り返る。

 戦後、子どもを抱え引き揚げ船で帰国した祖父母。うまくいかない事業。仕事中に東京で車にはねられ、骨盤を砕く大事故に見舞われた。不運続きの吾郎を、それでも朋子は笑顔で支え続けた。

 「結婚してよかった」と心から思える相手と添い遂げ、吾郎は47歳の誕生日に息を引き取った。海外を旅しようと話し合った夢を数枚の絵に描き残していた。

 時を超え祖父を演じた孫は「見た人にそれぞれの人生を重ねてほしい」と願う。

むかい・おさむ 俳優。1982年生まれ。横浜市出身。2006年に俳優デビュー。映画化もされたドラマ「信長協奏曲」など出演作は多数。出演した「いつまた、君と ~何日君再来~」(深川栄洋監督)は、横浜ブルク13、TOHOシネマズららぽーと横浜など県内では9カ所で上映。共演は尾野真千子、岸本加世子、野際陽子さんら。

記者の一言
 できたばかりと手渡された映画のパンフレットを向井さんと開いた。祖母役を務めた野際陽子さんが手にした本は「僕が自費出版した本物」と教えてくれた。

 パンフレットには向井さんの祖父母が出会った日に店で流れていた思い出の曲「何日君再来」の歌詞全てが掲載されている。「『よろこびも 悲しみも うちあけ なぐさめ』という2番の歌詞は、おばあさまの心情に近いのでは」と話すと、「本当だ」としみじみながめた。映画では投げやりになり、家を飛び出した祖父を、祖母が捜し回る場面がある。思い出をひもとく祖母。たどり着いた草原に寂しそうな祖父の背中があった。寄り添うだけで、言葉はいらない。重ねた時間が、閉じた心を開いた。

 私もあの草原に行き着くことができるだろうか。大切な人をまぶたに浮かべ、自分に問いかけた。


向井理さん
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